世界一の投資家として知られるウォーレン・バフェット氏の投資手法は、バイ&ホールド型として有名です。

つまり、今後10年間で株価が10倍以上になるような会社を探しだし、その会社の株をできるだけ安値で買って、株を売らずにそのまま放置するという手法です。

バフェットの銘柄選択術

会社の業績や経営状況を分析して株を買う方法をファンダメンタル分析と呼びますが、世界一のファンダメンタル分析の名人がウォーレン・バフェット氏です。

日本で言えば、セブンイレブンやソフトバンク、Yahooといった会社の株をまだ会社が小さなうちに買い、そのまま保有し続けるという方法です。
Yahooを上場直後に最低単位の150万円で購入し、そのまま保持し続ければ、なんと3億8千万円にまで資産が増えたそうです。

ソフトバンクの孫正義氏も最近は特に投資に注力しておられるようです。
最近では、ソフトバンクが出資していた中国のネット通販会社アリババの上場により、一気に20兆円も資産が増加したというニュースもありました。

また、最近では10兆円ファンドを運営するということで、既に、3兆2000億円もの資金を投じ、2017年度は、そのファンドの利益だけでも3,000億円になったとのことです。

一般人には、想像もつかない金額です。私も、バフェット氏や孫氏は、どうやって10年も先の未来が見通せるのだろう。きっと、彼らが経営の天才であるがゆえに、そんなことが可能であり、一般人には不可能だと思っていました。

その思い込みを変えてくれたのが、
「バフェットの銘柄選択術」という本です。

バフェットの銘柄選択術

長期投資、ファンダメンタル分析が好きな方は、ぜひ、ご一読ください。
著者はメアリー・バフェットというバフェット氏の息子さんのお嫁さんということなので、その内容にも信頼がおけます。

それでは、バフェット氏は、どのように銘柄を選択しているのでしょうか?
この本では、主に、財務指標から銘柄を選択する方法を説明しています。

もちろん、バフェット氏や孫氏は、経営者としての社長の実力や、世の中の動向・新技術など様々な要素を考慮して長期投資をしておられるのでしょう。

ただ、一般人には、社長の実力など簡単に判断できるものではありません。
しかし、財務諸表を分析するのであれば、会社四季報や決算報告書を見れば、誰にでも、ある一定レベルまでは実施可能です。

私も、この本を読んでから、会社四季報を使って、銘柄の選択を行いました。
ぜひ、みなさんも参考にしてみてください。

この記事では、特に、私が重視している指標を説明します。

長期投資家が重視すべき指標

バフェットの銘柄選択術では、その他にも自社株買いを積極的に行っている会社など、様々な指標があるのですが、特に、私が重視している指標は、以下の3つです。

  • 売上・経常利益率が過去5年間以上、平均して、毎年20%~30%以上伸びている企業
  • 自己資本比率が50%以上の会社
  • ROEが20%以上

それぞれの内容を以下に記します。

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売上・経常利益率が過去5年間以上、平均して、毎年20%~30%以上伸びている企業

バフェットの基準としては、過去10年間以上伸びている企業としています。
ただ、会社四季報では、決算時期や会社によっても異なりますが、過去5年程度の実績と今期、および、来期の見通ししか出ていません。

各社のホームページに行き、有価証券報告書をダウンロードするなどすれば、10年間の実績が確認できるでしょうが、専業トレーダーでもなければ、なかなか、そこまでの時間が取れません。

まずは、会社四季報で、過去5年間、および、今期と来期の予想も含めて、6年間継続して20%以上売上や経常利益が伸びている会社を売買選定銘柄としています。

仮に、6年間の平均伸長率が20%だとすれば、売上や経常利益は、3.58倍となります。
ですから、売上や経常利益が6年間で4倍程度になっている会社を探します。

もちろん、たまたま6年前だけが悪かったというケースもあります。
また、今年度だけ会計基準の変更により、利益が50%伸びているといった会社もあります。

ですから、経常利益が4倍になっているとしても、毎年、着実に成長している会社のほうが望ましいです。

例えば、スマホ向け電子部品では、世界トップクラスの村田製作所というメーカーがあります。
この会社の純利益は、2013年3月期の42,386(百万円)から2018年3月期144,000(百万円)と約3倍になっています。5年間の平均伸び率は、約27.7%となります。

さらに、2019年3月期は220,000(百万円)と2018年から一気に、50%以上もの伸びとなっています。
760億円もの利益の増加です。

これだけ伸びるのであれば、株価は50%程度は上昇するだろうと思って注視していました。

ただし、実は、そのうち670億円、約90%は減価償却費の計算方法を国際会計基準に合わせるために、定率法から定額法に変更したことによるものということでした。

この分を差し引くと、実質的な営業活動による利益の増加分は90億円のみ。一年間の伸び率は、6.25%に留まります。

残念ながら、会社四季報には、そこまで詳細な記事は出ていません。
やはり、ファンダメンタル分析を主体にする場合は、日経新聞も熟読する必要があります。

また、バフェット氏の基準では、過去10年間安定して成長してきた企業となっていますが、時代の変化が早くなった現代では、10年は長すぎるとも思われます。

例えば、Appleが急成長しだしたのは、iPodが軌道に乗り出した2006年からです。その後、2008年にiPhoneが発表され、その後は、ご存知のように世界一の企業へと駆け上がります。

2018年1月~3月において、バフェット氏が大量のApple株を購入したことが話題となりました。約3兆円相当のApple株を保有しているとのことです。

Apple社は、過去10年間安定した伸びを見せ、また、自社株買いも積極的に実施するなど、まさに、バフェット氏好みの株です。ただ、さすがに、ここまで会社が大きくなると、ここから株価が10倍になるとは考えにくいです。

バフェット氏ほど運用資金が大きくなりすぎると、株を購入するだけで、株価が大きく上昇してしまうので、相当の大企業でなければ、購入できないといった事情があると思われます。

一方、以前は、急成長を続けてきたのに、ここ10年間で縮小していった会社もあります。その代表格がDELL社です。2000年初頭には、「パソコン事業は、世界でDELLしか儲かっていない」と言われていたのですが、2013年には上場廃止となりました。上場廃止になった年でも決して赤字になっていたわけではなく、売上も6兆円、利益も2,500億円もあたのですが、株価は低迷していました。

このような状況を考えますと、バフェット氏や孫氏ほどの天才経営者でない一般個人投資家にとっては、会社四季報に載っている5、6年でも銘柄分析には十分と考えています。

自己資本比率が50%以上の会社

小型株では、毎年20%~30%程度伸びを示している会社は多数見つかります。
ただ、そういった会社は、まだ規模が小さくさらなる急成長の可能性と同時に倒産の危険性もはらんでいます。
ソフトバンクでさえも、成長過程においては、資金が続かずになり、黒字倒産するのではないかと言われたことが何度もありました。
このため、できるだけ倒産リスクの少ない会社を推薦します。

ひとつの目安として、自己資本比率が50%以上の会社を選んでいます。

株主資本利益率(ROE)が20%以上

もうひとつ、バフェット氏が重視しているのが株主資本利益率です。
特に、この株主資本利益率を使って、将来の株価を予想するという手法には、びっくりしました。

株主資本利益率(ROE)とは?

株主資本利益率(ROE)は

純利益÷株主資本(自己資本)

で計算します。

日本企業の平均は10%未満と言われています。高ければ高いほどいいのですが、この比率が平均の倍以上、20%以上を選定の対象とします。

バフェット氏の説明によれば、この株主資本利益率(ROE)を使って、将来の株価を予想できるというのです。

その理屈は、以下の通りです。

例えば、サラリーマンがマンションを購入して不動産投資を行う場合を考えてみましょう。

4,000万円のマンションを購入し、そのマンションを貸し出して、不動産収入を獲得しました。

購入資金4,000万円のうち、3,000万円は銀行からの借入。1,000万円が自己資金(自己資本)です。

仮に、家賃収入が年間200万円。ローンの金利や固定資産税、管理費などの支出が、年間100万円だったとすると、純利益は200万円-100万円=100万円

自己資本利益率は
純利益100万円÷自己資本1,000万円=10%となります。

つまり、自分のお金1,000万円を使って、毎年100万円の利益を生み出しており、利益率は10%という考え方です。そして、この基本的な考え方を上場企業にも適用します。

Monotaroという会社があります。

ここは、インターネットで工具を販売している会社で、いわばアマゾンの工具バージョンのような会社ですが、ここは、ROEが43%もあるという驚異的な会社です。

また、利益のうち、毎年約17%を配当としています。

つまり、税金を差し引いた後の利益のうち、100%-17%=83%が内部留保として会社に残るという考え方です。

この場合、毎年、どの程度自己資本が増えていくかというと、

ROE43%×83%=35.7%

毎年35.7%の勢いで自己資本が増えていきます。

先ほどのマンション投資に当てはめて考えると、1,000万円だった資本が翌年には、1,357万円になり、その翌年には、1,841万円、さらに、その翌年には、2,498万円と凄い勢いで増えていくということです。

そして、毎年、35.7%ずつ資本や利益が増えれば、将来の株価はいくらくらいになるだろうかとの予測が成り立ちます。

Monotaroの現在の一株資本(BPS)と一株利益(EPS)は以下の通りです。

一株資本(BPS) 157.4円
一株利益(EPS) 67.7円

一株資本(BPS)が毎年35.7%だけ増加したとすると、10年後には、BPSは、3,332円となります。

そして、一株利益は、

純利益÷株主資本=株主利益率(ROE)なので、
この式に、上記の数値を代入すると、

 純利益/一株=株主利益率×株主資本/一株
=ROE(43%)×BPS3,332円=1,433円

にもなります。

現在の株価は、4,000円と非常に高水準にあります。

PERで言えば、

4,000円÷67.7円≒60倍です。

日経平均全体のPERは13倍程度。
村田製作所のような伸びているメーカーでも20倍程度なので、これに比べれば、非常に高い水準にあります。

しかし、もし、一株利益が1,433円にもなれば、PERが例え村田製作所レベルの20倍まで落ちたとしても、28,000円以上の株価となり、10年後には7倍以上の株価となる可能性があるのです。タイミングによっては、10年で10倍も夢ではなくなります。

個人投資家にとってもバフェットの銘柄選択術は有望か?

確かに、過去5年間毎年20%以上伸びを続けている会社で、自己資本比率も50%以上と高く、さらに、ROEも高い会社であれば、今後の10年間で株価は10倍になるかもしれません。

実際、この条件に該当する会社は数千ある上場会社の中でも数十社しかありません。

しかし、バフェット氏のような天才投資家ではない一般投資家にとっては心配な点もあります。

成長株は急騰・急落を繰り返す

ただし、こういった成長株は、まだまだ規模が小さい会社が多く、株価も急騰・急落を繰り返します。
底値で買えた場合は、一年で50%程度の利益を出すことも可能でしょうが、高値づかみとなった場合は、30%程度の下落に見舞われる可能性もあります。日経平均の急落と重なれば、さらに、マイナスは大きくなり、50%近い下落も覚悟しておく必要があるでしょう。

10年後も成長株であるかどうか不明

売上が6兆円もあったDELLでさえ、株価が低迷し、上場廃止になることもあるのです。
自分が選んだ会社の成長がいつ止まるかは予想できません。

個人投資家にできる対応策

そういった意味では、やはり成長株投資といえども、チャートを見て売買のタイミングを図り、底から上昇したタイミングで買うことをオススメします。

また、成長株投資の場合は、本来、損切をしないのですが、購入価格から10%下がれば、一旦、損切手仕舞いするなどのルールを設定しておくべきでしょう。

さらに、成長株の中でも、値動きにリズムのある株を選んで、うねり取りを行えれば、毎年30%程度は上下に変動しますので、もっと大きな利益が取れるかもしれません。

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