これまで多くの投資関連本を読んできましたが、
多くの成功したトレーダーや相場師が口を酸っぱくして言うのが損切の大切さです。
なかには、相場で大切なことは、
「一に損切、二に損切、三にも損切。これができれば成功する」
という人がいるくらいです。
私も本を読んで「損切が大切」という知識はありましたが、実際に、自分で実行しようとなると、全く効果的な損切が実践できませんでした。
この記事では、初心者にでもできる適切な損切基準の設定方法を記入します。
損切基準は10%が適切?
Contents
日本の昔の相場師の書いた本を読むと、最低、5%逆行すれば、損切。
あるいは、10%逆行すれば損切すべし、といった説明がよく書かれていました。
投資資金も少なかった私は、その教えを守ろうとしたのですが、具体的なやり方が分からず、いつも何回か売買すると大幅なドローダウンとなり、市場から撤退していきました。
私の典型的な失敗例は、以下のようなものです。
- 証券会社からの情報等によって、A銘柄を100万円購入する。
- A銘柄が10%下落し損切。資金90万円
- 今度も、何らかの情報に基づき、B銘柄を90万円購入する。
- B銘柄が10%下落し損切。資金81万円
- 今度も、何らかの情報に基づき、C銘柄を81万円購入する。
- C銘柄が10%下落し損切。資金73万円
嫌になって、株式市場から撤退。
そもそも自分のトレードルールを持たずに、証券会社の情報に基づいて仕掛けるのが間違いなのですが、それと同じくらい損切基準の設定方法も適切ではなかったのです。
それでは、初心者にとって、どのような損切基準が適切なのでしょうか?
損切基準の設定は不要?
まず、最初に損切が大切と書きましたが、実は、損切を設定してはいけない投資方法もあるのです。
それが、長期投資を前提とした成長株投資やインデックス投資の場合です。
株式投資といっても、全て自分で判断しなければいけない、という訳ではありません。
投資信託の購入も株式投資です。また、インデックスファンドといって、日経平均などの指数に完全に連動するファンドもあります。
最近では、積立型のインデックスファンドが人気なようですが、これなんかは、毎月お金を積み立てるだけで、特に、自分で考える必要はありません。
これで、お金がドンドン増えていけば、ある意味、これ以上楽なことはありません。
しかし、デメリットもあります。
例えば、完全に日経平均に連動するインデックスファンド場合、当然ですが、日経平均が10%ダウンすれば、ファンドの基準価格も10%下がります。
もし、投資信託で10%ダウンすれば損切といった基準を持っていると、一旦、日経平均が下降トレンドに入った場合は、すぐに、解約となってしまいます。
長期積み立て投資が有利と言われるのは、ドルコスト平均法によるものです。
ドルコスト平均法とは?
ドルコスト平均法とは毎月の購入金額を一定にしておけば、自然と下げ相場の時には買付できる数量が増えますし、上げ相場の時には買付できる数量が減ります。結果として、1単位当たりの買い付け金額が安くなるというものです。
例えば、
毎回3万円を積み立て、日経平均と連動するインデックスファンドを購入するとします。
日経平均が3万円だった場合は、1単位しか購入できません。
しかし、日経平均が1万円まで下がった場合は、3単位購入できます。
これで合計4単位となりました。1単位当たりの平均コストは
(3万円+3万円)÷4単位=1.5万円/単位となります。
そして、日経平均が再度3万円にまで上がった場合は、(3万円-1.5万円)×4単位=6万円の利益となります。
これが、ドルコスト平均法を採用すれば、長期的には利益が出るとされる理由です。
長期投資は安全か?
ちなみに、バブル絶頂期の1989年12月の38,916円の時に、インデックスファンドで積み立て投資を行ったとしても、これまで継続していれば、55%の利益が出ているということです。
ただし、利益が出始めるのは、なんと24年後の2013年からで、しかも、その間に最大50%以上の損失を経ているということです。
つまり、長期投資は長い年月行えば、バブルの絶頂期のような最悪のタイミングで実施したとしても利益が出ますが、長期投資を行うと決めた場合には、損切をしてはいけないのです。
ただし、この場合には最大50%もの資金の減少を覚悟する必要があります。
このことはウォーレン・バフェット氏のような長期投資家にもあてはまります。
タートルズの資金管理方法と損切基準について
次に、ご紹介するのはアメリカの伝説的なトレード集団、タートルズの資金管理方法です。
私は、この方法を「トレーダーズバイブル」(小次郎講師著:パンローリング社)によって、初めて知りました。
資金管理方法については、これまでに読んだ本の中でベストです。
投資で継続的に利益を上げたい人は、ぜひ、ご一読をオススメします。
ただ、最初にひとつお断りしておく必要があるのは、タートルズのやり方は、資金の少ない初心者が実施するには、ハードルが高すぎるので、初心者向けに改良した方法でなければ実施が困難だということです。
タートルの資金管理方法
それでは、まず、タートルの資金管理方法をご説明します。
アメリカの多くの有名トレーダーがほぼ同じことを言っていますので、成功している投資家の間では投資で勝ち続けるための必勝というか、不敗の方法になっていると思われます。
なお、ここで不敗と言っているのは、長期的に破産しないという意味で使っていますので、100%勝つという意味ではありません。
アメリカの有名トレーダーが書いた本を読むと、「1回の損失は1%未満にする」といった記述があります。
以前は、この意味が理解できませんでした。
というのも、以前の私の投資スタイルでいけば、1,000円の株を1,000株、100万円分購入。その株が900円になれば、損切するという方法だったからです。
もし、損切基準を1%にすれば、たったの10円の変動で、損切です。
以前の私には、想像もできない低い幅での損切だったのです。
ところが、最近になって、ようやく損切1%の意味が分かってきました。
それが、1回あたりのトレード単位(金額):ユニットという考え方です。
ユニットとは?
タートルズは、1回当たりのトレード金額は、1回のトレードで取ってもよいリスク(=投資資金の1%のリスク)の金額と決め、それを1ユニットと呼んでいました。
アメリカの成功したトレーダーによると、人によっては多少の違いはありますが、損切の基準を0.5%~2%に設定している人が多いようです。
モデリングという考え方があります。
これは、成功者の真似をすれば、自分も成功できる、という考え方です。
そして、もちろん投資の世界においても成功者の真似をすれば、同じような結果が出るはずです。
今まで、投資で利益を出せなかった人は、この際、成功者の真似をしてみませんか?
年間を通して考えれば、グッと利益が出る確率が高まるはずです。
さて、ユニットに話を戻しましょう。
仮に、1回当たりにとってもよいリスクを1%と設定すれば、この1%から逆算して、取引金額を決めるのです。
例えば、初心者で、まず30万円を使って、売買の練習を始めるとしましょう。
この場合、1回にとってもいいリスクは、以下の計算式によって求められます。
投資金額×1%=30万円×1%=3,000円
なんと、1回当たりのリスクは、たったの3,000円です。
これなら、例え、10連敗したとしても、30,000円。トータル資金の10%しか負けません。
勝率50%として仮定すると、10連敗する確率は、1/1000未満になり、破産する確率(株式市場から撤退しなければならなくなる状態。必ずしも自己破産は意味しません)は非常に低くなります。
もちろん、これ以外に売買手数料がかかり、資金が少ないうちは、投資に占める売買手数料の割合も高くなってしまいますが、これは、最初のうちは止むを得ません。
ATRとは?
それでは、この考え方から、どのようにして売買する銘柄の取引量を決めるのでしょうか?
まず、1日当たりのリスクについてですが、一日の最大値幅の平均値を計算上のリスクとして考えます。
そして、この一日の最大値幅の平均値をATR(Average True Range)と呼ぶのですが、この値を元に取引量(金額)を決定します。
まず、ATRの算出方法を説明します。
1日の最大値幅は、以下の3つの値幅を確認し、その中の最大値を最大値幅とします。
- 当日高値-前日終値
- 前日終値-当日安値
- 当日高値-当日安値
例えば、Panasonicの2018年5月9日から10日にかけてのそれぞれの価格は以下の通りとなっていました。
- 前日終値 1,556円
- 当日高値 1,568円
- 当日安値 1,548円
- 当日終値 1,562円
この場合、
当日高値-前日終値=1,568円-1,556円=12円
前日終値-当日安値=1,556円-1,548円=12円
当日高値-当日安値=1,568円-1,548円=12円
となり、たまたま全ての値が12円となりましたが、12円が最大値幅となります。
そして、この最大値を毎日計算し、過去の20日間平均をATRとするものです。
この日は値動きが少なかった日ですが、過去20日間の平均では、25.3円となります。
ATRをベースに売買すれば、100%安全か?
もちろん、25円はあくまでも平均値です。過去2年の間の1日の最大値幅は129円でした。
2016年6月24日に最大値幅となったのですが、この日は始値965円から終値877円まで一気に88円まで急落しました。率にして9.1%の急落です。
したがって、株式投資を実施する限り、いくら資金管理をしていたとしても、10%程度のドローダウンは覚悟しておく必要があるでしょう。
なお、1987年10月19日にアメリカで起こったブラックマンデーの日には、なんと1日でダウ平均が22.6%も下がったということです。
現在の日経平均に当てはめれば、1日で5,000円も下がるということです。
長い人生の中では、今後も同様の事件があるかもしれない、ということは心に留めておいたほうがいいでしょう。
なお、過去の株価(始値、高値、安値、終値)に関しては、証券会社で口座を作れば、すぐに、ダウンロードできます。
私は、GMOクリック証券を使っています。
さて、ATRに話を戻しますと、このATRをベースに1回当たりの取引金額を決めるのです。
計算式は以下の通りです。
取引可能単位=(投資金額×1%)÷(取引単位×ATR)
仮に、当初資金30万円で、パナソニックを売買しようとすれば、
(300,000円×1%)÷(100株×25円)=1.2単位
となり、100株の購入ならOKとなります。
損切基準の設定
損切は何パーセントが妥当か?
従来までの損切方法なら、損切は5%や10%といった数値、もしくは、50円や100円といった数値で設定していました。
しかし、タートルズのやり方では、ATRをベースに設定するのです。
タートルズの場合は、2ATRを損切基準としていたようです。
つまり、パナソニックであれば、買値から2ATR=25円×2=50円下がれば、損切です。
たったの50円ですので、買ったその日には損切になるかもしれません。
ただ、これが、最終的に破産を免れ、長期的に資産を築く方法なのです。
ただし、損切の幅については、各人の売買スタイルによって大きく変わってきます。
デイトレード主体の人ならば、もっと小さな0.5ATRといった数字を使っているかもしれません。
あるいは、成長株の長期投資をする人ならば、もっと大きな5ATRを使っているかもしれません。
これに関しては、実際に自分で売買を繰り返し、自分にとってストレスのない基準を決めるのが一番いいと思います。
私の場合、最初、1ATRで売買をして、十分に利益が出ていたのですが、アメリカでは2.5~3ATRが多いということを聞いて、一時期、2.5ATRに変更したことがあります。
しかし、私の売買スタイルではリスクが大きすぎて、うまく機能しませんでした。
具体的な損切の基準は、売買スタイルによって大きく変わってきますので、何回か少ない資金で売買をして、自分にとっての基準やルールを決める必要があります。
リスク管理について
さて、考えなければならないのは、売買1回ごとのリスク管理だけではありません。資金トータルのリスク管理も検討する必要があります。
300,000円の資金でPanasonicなら100株だけ購入できるとなったわけですが、その他の銘柄も買っていいのでしょうか?
結論から言えば、OKです。
最初は、現物株だけで売買をすることをオススメしますが、まだ残り14万円程度資金がありますので、同様に、1,000円前後の株なら、もう一銘柄購入してもOKです。
なお、もう一銘柄購入する場合でも、以下の計算式を使いますので、もう一銘柄増えたとしても、全体のリスクは2%に留まります。
(投資金額×1%)÷(取引単位×ATR)=取引可能金額
なお、2銘柄を購入する場合、SONYとPanasonicといったように、同じ業界の銘柄を購入すると、似たような値動きをする可能性が強いため、電機業界と建設業界といったような別々の業界から選択されることをオススメします。
タートルズのリスク分散について
それでは、タートルズは、どのような資金管理・リスク分散を行っていたのでしょうか?
タートルズの場合は、さきほどのユニットの考え方に基づき、最大10ユニットの建玉をする場面があったそうです。
ただし、一つの銘柄でいきなり10ユニットも建玉するわけではありません。
銘柄分散ルールとしては、以下ルールがあったとのことです。
- 同一銘柄は4ユニットまで
- 相関関係の高い銘柄は6ユニットまで
- 相関歓迎がある銘柄は10ユニットまで
ただし、初心者がこのルールを適用するのは、危険すぎます。
信用取引を使えば、手元資金30万円でも、90万円まで購入することはできます。
さきほどのパナソニックの例で言えば、30万円の資金で、4ユニット(400株)、60万円以上パナソニックを購入することもできます。
タートルズの方式を採用するのであれば、一度に400株購入するのではなく、利益が出れば、100株ずつ買い増しという方針なので、その分リスクは減ります。
ただ、1日で100円落ちる可能性もあることを考えると、1日で4万円、10%以上の損失を被るのはリスクが大きすぎます。
同様に、株式市場だけに限定するならば、日経平均が急落する際は、ほぼ100%と言っていいくらいどの株も暴落します。
したがって、FX市場や他の商品先物市場でも利用しない限り、「どの銘柄を買っても高い相関関係がある」と言わざるを得ません。
最初から、慣れない複数の市場で売買することもリスクにつながります。
初心者のうちは、1%のリスク管理を守り、手持ち資金の範囲で売買を繰り返しましょう。
1%ルールでは、儲からない?
1%ルールで資金管理をしたのでは、ちっとも儲からないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
例えば、30万円の資金で1,560円でPanasonic、1,030円で鹿島建設を購入したとしましょう。
2018年の1月にはPanasonicは1,700円台、鹿島建設は1,100円台をつけていましたので、今年の高値付近まで戻せば、それぞれ7~8%の利益となります。
同様の動きで年に3回転すれば、20%以上の利益となります。
20%では小さいと思われているかもしれませんが、世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェットでさえ、生涯利回りは20%と言われていますので、この数字を数十年キープできれば、誰でも億万長者になれます。
まずは、少ない資金でリスク管理をきっちりと行い、売買練習を続け、安定して稼ぎ続けられるトレーダーを目指しましょう。