ひと口に株式投資と言っても、様々な方法があります。

世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェット氏のやり方は、バイ&ホールドと言われ、一度、買った株は売らないという長期投資のやり方。

これとは対照的にデイトレーダーと呼ばれる人々は、一日中、チャートを見て、今日、買って、そして、その日中に手仕舞いしてしまうという方法。

あるいは、うねり取りと言って、数週間から数か月の株価の変動を取ろうという昔の日本の相場師が使っていた方法もあります。

今回、ご紹介する株式異銘柄投資は、それらの方法とはかなり異色です。

株式異銘柄サヤ取りとは?

つまり、Aという銘柄とBという銘柄の価格差に注目し、その価格差が縮小するか、拡大するかということを利用して利益を出そうという方法なのです。

かなり異色の方法ではあるのですが、日経平均が暴落するなかでも利用できる方法であり、株式投資の方法としては、最も安全という人もいるくらいです。

折れ線グラフ

大成建設と鹿島建設という日本を代表する建設会社があります。

昨年の10月13日の株価はそれぞれ以下の通りとなっていました。

大成建設 6,300円
鹿島建設 1,167円
価格差  5,133円

この価格差のことをサヤと呼びますが、このサヤが5,000円以上開いたのは、ここ2年間で数日しかありません。
5,000円ものサヤは開きすぎた、今度は、サヤが収縮するだろうと思って、売買を仕掛ける方法が株式異銘柄サヤ取りと言われる方法なのです。

たとえば、2017年10月13日に5,133円まで開いたサヤはその後収縮します。

そして、2018年3月2日の株価は以下の通りとなります。

大成建設 5,160円
鹿島建設 983円
価格差  4,177円

もちろん、サヤの最大値がいくらになるか、最小値がいくらになるかは分からないのですが、サヤの拡大や縮小を狙って、仕掛ける方法がサヤ取りなのです。

それでは、実際、どのように仕掛けるのでしょうか?

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サヤの縮小狙い

もし、2017年の10月13日にサヤの縮小を狙って、仕掛ける場合は、以下の通りとなります。

空売り  大成建設 100株 6,300円
新規買い 鹿島建設 500株 1,167円

およそ売買金額が同等になるように仕掛けます。

そして、狙い通り、サヤが縮小し、2018年3月2日に手仕舞いをしました。

買戻し 大成建設 100株 5,160円
売却  鹿島建設 500株 983円

その結果、それぞれの損益は以下の通りとなります。

大成建設 (6,300円-5,160円)×100株=114,000円の利益
鹿島建設 (983円-1,167円)×500株=92000円の損失
合計 22,000円の利益

鹿島建設は現物で購入し、大成建設は空売りしますので、
このサヤ取りを仕掛けるのに最低必要な資金は
1,167円×500株=583,500円です。

583,500円に対して、22,000円の利益だと、率にして、3.77%です。
これでは、株式投資としては、うまみが少ないと思われるかもしれません。

最初から大成建設の空売りだけをしていれば、114,000円の利益となり、18%の利益が出たと思われるかもしれません。

理屈としては、そうなのですが、今回はサヤの縮小を狙った売買なので、片方の株では利益が出るが、もう一方では損失となる場合がほとんどなのです。

サヤ取りの特徴として、利益率は少ないが、一般の株式投資よりも安全と言われています。

また、慣れてきたら、利益が出ていないほうの銘柄を手仕舞いして、サヤ取りから通常の売買に戻るというやり方もあります。

2017年10月~12月は大成建設の株価は、ほとんどの日で6,000円台をキープしていたのですが、12月後半から6,000円を割り込んで来ます。

同様に、鹿島建設の株価も1,100円台から1,000円台へと突入してきました。

相場全体が下降トレンドに入ってきたと思われるようであれば、この時点で鹿島建設を途中で売却し、サヤ取りはストップ。大成建設の空売りだけを残すといった方法もできるようになってきます。

サヤ取り投資の銘柄の選び方

サヤ取り投資では、できるだけ同じ業界の似たような会社を選んで仕掛けることが安全と言われています。

例えば、大成建設、鹿島建設は、どちらもスーパーゼネコンと言われる会社です。

売上や利益は以下の通りです。

大成鹿島
2018年度については、若干、大成建設のほうが伸び率が大きいですが、売上・利益ともに同程度の会社です。

こういった会社であれば、サヤが永遠に拡大していくということは、まず、考えられません。
また、スーパーゼネコンのような会社の場合、画期的な新商品が開発され、ある会社の業績が飛躍的に伸びるといった事態は想定しにくいです。

ただし、同じ業界であっても、新商品のヒット状況によっては、業績が大きく変動するような会社をサヤ取りに選んではいけません。

例えば、ゲーム業界であれば、一本のソフトの売れ行きによって大きく業績が変わりますので、サヤが縮小すると思って仕掛けても、ドンドン拡大していく可能性があります。

ゲーム業界は極端な例ですが、電機業界でも会社によって業績の大きな変動があります。

以下はSONYとパナソニックのサヤ変動グラフです。

SONYとパナソニックのサヤ

ご覧のように、サヤは2年前の1,500円から一時は4,000円まで拡大しました。

また、SONYは2018年3月期に過去最高の経常利益を出したのですが、昨年の10月下旬にその見通しを発表後、急騰し、サヤ自体も10日ほどで1,000円も拡大してしまいました。

パナソニックも2012年、2013年に7,000億円もの赤字を出した後、順調に回復し、2018年3月期は3,000億円を超える利益を出したのですが、SONYは、さらに業績を改善し、その倍以上の約7,000億円もの利益を出しました。

パナソニックは、ここ数年、テスラ向けのEV電池が順調に伸びてきていたのですが、テスラの生産遅延により、2019年の業績に影響が出るかもしれないと言われています。

もし、そうなれば、サヤは更に5,000円、6,000円と拡大していくかもしれないのです。

こういった銘柄は、サヤ取りには適しません。

この記事では、安全面を重視し、同じ業界でのサヤ取りを推薦していますが、異なる業界でのサヤ取りを推薦する方もおられます。

ただ、その場合においては、突発的なグッドニュースやバッドニュースが流れ、サヤのトレンドが一気に逆転してしまうリスクもあるのです。

建設株が株式異銘柄サヤ取りに最適な理由

それに比べて、サヤ取りにオススメなのが、建設株です。

日本の建設株、特に、スーパーゼネコンと呼ばれる大手5社(鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店)は、会社の規模や利益も似ています。

また、電機メーカーの場合には、ひとつのヒット商品が大きく売上や利益を伸ばす場合もあります。iPhoneの爆発的ヒットにより、時価総額世界一となったApple社がいい例です。

さらに、同業間での競争が非常に激しく、社員たちも常にライバル会社を意識した商品開発・営業活動を行っています。

ところが、日本の建設業界は、他の業界と比べて、かなり事情が異なります。

つまり、横並び意識が非常に強いのです。

しかも、数年に一度は談合問題で摘発されています。

談合で、各社の売上がほぼ等分になるように打ち合わせをしているケースが多々あるようなのです。
昨年もリニア・モーターカーの建設で談合があったと公正取引委員会や東京地検特捜部に摘発されています。

通常、こういった不祥事があると株価は大きく下がります。

2017年度には、やはり神戸製鋼のデータ改ざん問題が発覚しましたが、神戸製鋼の株価は、一気に、1,300円台から800円台まで、約40%も下落しています。

ところが、スーパーゼネコンの場合、談合のような不祥事が発覚しても、それほど株価が下がらないのです。日本社会全体が、「あー、またか」ということで容認しているのでしょうか?

リニア・モーターカーの建設工事は総額9兆円にも及ぶそうです。
例え、談合問題があったとしても、これだけの工事になるとスーパーゼネコンを外しては建設工事そのものが成り立たなくなるのでしょう。

そういった背景もあって、数年に一度は、談合問題が表面化するのかもしれません。

それに、談合には、全てのスーパーゼネコンが関わっていますから、株価が下げる場合には、どの会社の株も下がります。これはサヤ取りにとって好都合です。

日経平均暴落時でも利益を出せるサヤ取り

そして、日経平均が暴落するような場面においても同様のことが言えます。
通常の株式投資であれば、買いから入る方が多いと思います。

日経平均が暴落するような場合は、大きな打撃を受ける方が多いのですが、サヤ取りならば、仕掛けている2銘柄のどちらもが暴落します。

実際、2018年2月6日には日経平均が1日で1,000円以上も暴落しました。
もちろん、ほとんどの株が下げ、大きな損失を被った人も多いはずです。

しかし、大成建設(空売り)-鹿島建設(買い)のサヤ取りでは、サヤの縮小トレンドが継続しているだけで、相場全体の暴落とは何の関係もなかったのです。

大成建設-鹿島建設のサヤ取りのチャンス?

2018年5月11日現在の両社の株価は以下の通りです。

大成建設:6,060円
鹿島建設:1,052円
サヤ  :5,008円

一旦、2月13日に4,059円まで縮小したサヤが再び5,000円台に拡大してきました。
次に、サヤが縮小に移行する時が仕掛け時かもしれません。

仕掛けた後に、再び、日経平均が下降トレンドに移行するようであれば、鹿島建設の買いだけを手仕舞うこともできます。

ただ、この場合には、うねり取りの練習を行って、ある程度、上達した後のほうがいいかもしれません。

通常の株式投資よりも安全と言われるサヤ取りを手がけてみませんか?

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