一時、デイトレードがもてはやされ、テレビでもデイトレーダーとして成功している人々がよく取り上げられました。
しかし、流石に、一般のサラリーマンにとってはデイトレードで継続的に利益を上げるのは困難なようで、ニュースに取り上げられることも少なくなりました。
もちろん、デイトレードで大きな利益を上げている人もいますが、この記事では、サラリーマン投資家でも継続的に利益を上げやすいスイングトレードのやり方を説明します。
トレードの種類
ひと口にトレードと言っても、ウォーレン・バフェット氏のようなバイ&ホールド型と言って、一度、買ったら10年以上売らないという方法もあれば、1円でも利益になれば、すぐに手仕舞うスキャルピングという方法もあります。
時間軸を基準にすれば、主に、以下のようなやり方があります。
スキャルピング
手数料を抜いて1円でも利益が上がれば、すぐに、手仕舞いするという方法。
証券自由化により手数料が大幅に安くなったため、理論的には個人投資家でも実施可能な方法となりました。
例えば、日経225先物ミニの場合、GMOクリック証券では手数料がわずかに38円です。買いと売りの往復でも76円しかかかりません。
日経225先物ミニは、5円幅で動き、取引単位は日経平均株価指数の100倍です。
仮に、22,400円で買って、22,405円で売った場合
手数料を差し引いた利益は
(22,405円-22,400円)×100倍-手数料76円=424円の利益となります。
さすがに、426円だけでは、時間をかけてまで投資をする意味がありませんが、日経225先物ミニでも10枚買えば4,260円の利益となります。
こういった超短期の売買を超高速で繰り返す方法がスキャルピングです。
デイトレード
スキャルピングほどではないのですが、やはり朝購入して、当日中に決済してしまう売買スタイルがデイトレードと呼ばれる方法です。
夜中にダウが大幅に動き、その影響で日経平均が1日で1,000円以上も下がる日が年に1回程度あります。
このため、利幅は小さくなりますが、全て当日中に決済を行い、夜中に発生するかもしれないリスクを避けるという方法がデイトレードです。
ジェイコム株誤発注事件で数十分で17億円を稼いだと言われるハンドルネームB・N・F氏は、まさに、このスタイルです。1日中トレードルームで複数の画面を見ながら取引していると言われています。
スイングトレード
上記二つが1日未満で終了するトレードだったのに対し、スイングトレードは、数日~数週間かけて、相場のうねりを取る売買手法です。
スキャルピングやデイトレードと比べて、一般のサラリーマンでも、無理なく実施できる方法であり、この記事では、主に、スイングトレードのメリットを書いています。
ポジショントレード
基本的にはスイングトレードと同じなのですが、もう少し時間軸の長い数週間~数か月保持することを前提としたトレード方法です。
バイ&ホールド型
世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェット氏が実践していることで有名な投資方法です。
つまり、一旦、購入したら、売らないつもりで保有し続けるという方法です。
これまでにバフェット氏が購入した銘柄としては、コカ・コーラが有名です。
1988年に一株当たり平均5.22ドルで購入されたそうです。
そして、株価は1999年には70ドルまで上昇。
さらには、この間に、配当も同様に大幅上昇するため、累計の配当額だけでも、最初の購入価格をほぼ賄える程度になったそうです。
各トレード方法のメリット・デメリット
スキャルピング・デイトレードのメリット・デメリット
スキャルピング・デイトレードのメリット
- 成功すれば、超高速で資金が増える
例えば、トレード1回当たりの期待値がプラス10,000円/回の仕組みを構築し、毎日10回トレードしたとしましょう。
資金は1,000万円。この場合、毎日、資金が1万円×10回=10万円増加していきます。
10万円程度であれば、たいしたことないと思われるかもしれませんが、もし、これを複利で回すことができれば、なんと1年後には資金が10倍にもなります。2年間で100倍、3年間で1,000倍です。
もちろん、1%を毎日複利で増やすということは現実的ではありません。
ただ、上述のジェイコム男のB・N・F氏は2000年に160万円で株式投資を始め、2008年には190億円を突破したとのことです。
毎年約3倍弱のペースで資産を殖やしたこととなります。
デイトレードで成功すれば、B・N・F氏ほどとは言わないまでも、毎年2倍程度の利益を出せる可能性も十分にあります。
さすがに、資金が数十億円となると、デイトレードだけでは利益を伸ばすのが難しいとB・N・F氏も話されていますが、資金が少ないうちであれば、年間2倍といったレベルも夢ではありません。
スキャルピング・デイトレードのデメリット
- 日中をデイトレードに費やす必要がある。
B・N・F氏もサラリーマンからデイトレーダーに転身されたわけではありません。
大学3年生の時に貯金やアルバイトで稼いだ160万円を元手にデイトレードを始め、一般の会社に就職せずに、デイトレードだけに専念されたから、これだけの成績を残されたのでしょう。
日中、働いているサラリーマンが勤務時間中に株式のデイトレードをするのは無理があります。トレードに悪い影響を及ぼすだけでなく、日常業務にも支障が出てくるでしょう。
夜、帰宅後にFXなどの夜間取引できる市場を選ぶ方法もありますが、これも寝不足の原因になり、トレードにも日常業務にも悪影響を及ぼすでしょう。
長期投資(バイ&ホールド型)のメリット・デメリット
長期投資(バイ&ホールド型)のメリット
- 相場の分析は、休日だけでOK。
日々の株価の変動を気にする必要がないため、相場の分析は、基本的に土日でOKです。
長期投資をするのであれば、世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェット氏のやり方を真似て、10年間で10倍以上になるような株を発掘し、日経平均が暴落したようなタイミングで購入されることをオススメします。
長期投資(バイ&ホールド型)のデメリット
- 成長株といえども急落する可能性がある。
ウォーレン・バフェット氏が提唱するような10年間で10倍になる可能性を持った会社となると、まだ、売上規模が小さな会社が多くなります。
こういった株は、やはり急騰・急落することが多いのです。タイミング悪く、急落直前に購入すると、株価が50%以上下落することはよくあります。
問題は、そういった自体が発生した場合、本当に自分の判断を信じて、買った株を長期保有できるかどうかです。
もちろん、自分を信じて保有し続けたとしても、株価はさらに下落するかもしれません。
また、急成長している会社の業績も、いつまで上昇するのか、一般の個人投資家には判断が難しいところです。
最終的に、自分の判断が良かったのか、悪かったのかは、10年経過しないと分かりません。
スイングトレードのメリット・デメリット
こういった背景を踏まえ、一般のサラリーマンでも比較的容易に取り組めるのが数日~数週間の保有を前提としたスイングトレードです。
スイングトレードのメリット
- 売買は1日1回だけなので、日常業務に支障をきたすことはない。
- 自分のトレードルールはプラスとなるか、マイナスとなるかの結果がすぐに分かる
- 期待値がプラスとなれば、そのルール通りに運用すれば安定した利益が期待できる
デメリット
- デイトレードほどではないが、毎日、チャートを確認し、売買記録をつける必要がある。
なぜ、サラリーマン投資家にとって、スイングトレードがベストなのか?
スイングトレードVSポジショントレード
この記事では、数日から数週間内での売買をスイングトレード、数週間から数か月以内のトレードをポジショントレードとしています。
私も、スイングトレードのやり方を知るまでは、ポジショントレードを取っていました。
ポジショントレードそれ自体は悪くないのですが、私の場合、損切基準の設定が甘く、3連敗ほどすると、損失が大きくなり、嫌になって、撤退していました。
何パーセント下がれば、損切?
損切は5%がいいとか、10%がいい、といった話をお聞きになったことがあると思います。しかし、これでは、大きすぎるのです。
トレードのやり方にもよるのですが、トレード1回当たりの損切はできれば1%未満。大きくても2%以内に抑えるべきです。
例えば、損切基準を10%に置き、そして、1銘柄だけを売買したとしましょう。
勝率が50%だとすると、3連敗する確率は、
1/2×1/2×1/2=1/8
で8回に1回は3連敗します。
そして、資金は100%→90%→81%→72.9%と3割近く減ってしまうのです。
もし、毎月1回売買し、かつ、3連敗したとすると、3か月程度で、資金が30%も減少してしまいます。
ポジションを長くすればするほど、つまり株の保有期間を長くすればするほど、大きなマイナスを覚悟する必要があり、損切基準も大きくせざるを得ません。
ただし、一般的に言われているような5%や10%といった水準に損切を設定すれば、サラリーマン投資家のやる気を削ぐような勢いで資産が減っていく可能性があります。
これを避けるためには、自分ができる範囲で株の保有期間を短くするとともに、損切基準も1%程度といった厳しい水準に置く必要があるのです。
スイングトレードの場合のトレードルール案
オススメのトレードルール案が以下の通りです。
ただ、あくまでは、これは一例ですので、自分のやり易いトレードルールを構築してください。
ただし、この方法なら一般のサラリーマン投資家にとって体力的にも心理的にもストレスが溜まらずに売買を継続できるでしょう。そして、売買を継続していくにつれて、売買技術も上達し、資産も次第に増加していくことでしょう。
資金管理ルール
- トレード1回当たりの損失を資金の1%以内に抑える。
例えば、資金が100万円だとすれば、1回当たりの損失は100万円×1%=1万円以内です。
株価の動きにリズムがあり、かつ、1回当たりの損失が1万円以内で購入できる株を探します。
例えば、スーパーゼネコンと言われる大林組、鹿島建設、清水建設といった株は、株価も1,000円前後で、しかも比較的リズムがある値動きです。
そして、これらの株の1日の平均的な値動きの幅(ATR:Average True Range)は25円程度です。
ATRは毎日変動しますが、仮に25円で損失の幅を1万円以内に抑えようとすれば、購入可能株数が決まります。
損失額10,000円÷25円=400株
普通は株価を基準として、購入株数を決めると思いますが、アメリカで主流となっている方法では、リスク=想定損失額から逆算して購入株数を決定します。
したがって値動きが荒い株は、購入可能数が減少します。
ATRに関しては、銘柄や株価によって大きく変動しますが、株価が1,000円前後で比較的安定している株ならば、400株前後まで購入できます。
少し余裕を見て、1,000円前後の株を300株×3銘柄購入します。
購入時の注意点としてはリスク分散のため、できるだけ業種も分けるようにします。例えば、建設、自動車関連、小売業といったような分け方です。
セットアップの基準
10日移動平均線を終値で上回ったら買い、一目均衡表の転換線を上回ったら買い、といった単純なルールで構いません。
単純に考えれば、勝率は50%です。
勝率よりも重要なのは期待値と売買回数です。
期待値がプラスであり、売買回数/月が分かれば、年間の予想利回りが算出できます。
いくら期待値や勝率が良くても、年に1回しか売買チャンスがないのであれば、年間利回りは下がりますので、勝率・期待値・売買回数等のバランスが大切です。
銘柄の選定
資金が十分にあるのであれば、様々な価格帯の株を購入できますが、トータル資金が100万円程度であれば、資金管理計算式を大前提として、1,000円までの株で、かつ、値動きにリズムがあるものの中から選定します。
バリュー投資では、PERやPBRを見ますが、数日~数週間の値動きだけに注視するスイングトレードでは、値動きだけに注目します。
まずは、売買対象銘柄を30銘柄ほど絞り、毎日チャートを確認しましょう。
対象銘柄を検討してから、セットアップ基準を考えるよりも、まずは仮でいいので、セットアップ基準を選定してから、そのセットアップ基準で機能しそうな銘柄を選んだほうが簡単です。
セットアップ基準を複雑に考えすぎると、勝率の高い売買システムを求めがちになりますが、複雑になればなるほど、実運用でいい結果が残せないようです。
損切基準
トレード1回当たりの損失を資金の1%として計算していますので、総資金が100万円ならば、1トレードで1万円以上の損失となれば、即、損切手仕舞いです。
1万円までいかなくても失敗したと感じれば、即、損切手仕舞いしたほうがいい結果が生まれます。
順張りか、逆張りか?
スイングトレードでは、順張りでトレードを行います。つまり、トレンドが発生したと思われる時に仕掛けます。
例えば、
- 10日移動平均線を上抜いた時に買いから入る
- 10日移動平均線を下抜いた時に売りから入る
ということです。
このため、空売りもできる貸借銘柄であることも銘柄選定の条件です。
昔の日本の相場師は逆張りが多かったそうですが、逆張りの場合、あっと言う間に1%の損切基準に引っかかってしまいます。
また、10日移動平均線を上抜いた時に買いから仕掛けるというのは、上昇トレンドが明確になったと思って、買うということです。しかし、買った途端に下がれば、まだ、上昇トレンドに移行しなかったと判断し、即、損切するのです。
もちろん、保有し続ければ、その後、上昇するかもしれないのですが、勝率にはこだわらずプラスの期待値を持つトレードルールを構築することを最優先として、即、損切するのです。
手仕舞いの基準
損切にかからずに、利益が出た場合は、セットアップの基準と逆の基準を第一優先とします。
つまり、10日移動平均線を上抜いた時に買いから仕掛けるのであれば、10日移動平均線を下抜いた時に売り手仕舞い。
このルールを守ることで、長くトレンドに乗ることができます。
トレードで成功するためには、損小利大が大切と言われますが、このルールを守れば、損は小さく、利益は大きく取れるようになります。
基本ルールは上記の通りですが、慣れてくれば、もう少し自分のやり方に合った手仕舞い方法を検討できるでしょう。
例えば、
- 株価が上昇するにつれて損切基準も引き上げ、損切基準に到達すれば、売り手仕舞い
- 購入した株が10%上昇すれば、売り手仕舞い
- トレンドが発生してから26日間保有する
など。
期待値の計算
上記のルールを構築し、まずは、20回~30回程度、トレードを行いましょう。
損切基準を1%に設定すれば、10連敗しても資金は10%しか減りません。
また、10連敗する確率は1/1000ですので、絶対起こりえないというレベルではないですが、ほぼ無視できるレベルです。
毎月10回トレードすれば、2~3ヶ月で20~30回トレードが実施できます。
そのうえで、以下の計算式で期待値を計算しましょう。
- 勝率=利益の出たトレード回数÷トータルトレード回数
- 平均利益/回=利益の出たトレードのトータル利益額÷利益の出たトレード回数
- 平均損失/回=損失の出たトレードのトータル損失額÷損失の出たトレード回数
- 期待値=平均利益/回×勝率-平均損失/回×(1-勝率)=平均利益
例えば、
資金1,000万円でスタートし、以下のような結果だった場合、期待値は20,101円/回となります。
トータル利益 861,920円
利益回数 11
平均利益/回 78,356円
トータル損失 -419,700円
損失回数 11
平均損失/回 -38,155円
勝率=利益回数(11回)÷トレード回数(22回)
=50.0%
期待値=平均利益/回×50%-平均損失/回×50%
=78,356円×50%-38,155円×50%=20,101円/回
つまり、トレード回数を重ねるごとに1回当たり20,000円の利益が見込めます。
トレード回数を重ねることで、成績が安定してきます。
これらのデータを元に年間の予想利回りも算出できます。
月間20回のトレードを1年間繰り返せば、年間以下の利益が見込めます。
期待値20,101円×20回/月×12か月=4,824,240円/年
年間利回り 4,824,240円/年÷10,000,000円=48.2%
もちろん、20回ほどトレードをして、期待値がマイナスであれば、トレードする度に資産が減っていきますので、トレードルールそのものを見直す必要があります。
こうして、まずは、トレードルールを構築し、トレードを繰り返す。
トレード毎に売買記録をつける。
期待値がプラスとなっているか検証。
必要に応じて、トレードルールを修正。
このやり方ならば、毎日30分程度の時間を費やすだけで繰り返し売買が継続でき、期待値がプラスのトレードルールを構築できます。