ある本で、コイントスでも負けない投資法、投資システムがあるという記事を読みました。

その時は、まさか、そんなシステムがあるはずがない。
もし、あったとしても素人がそんな投資システムを作れるはずがないと思っていました。

しかし、実は、コイントスでも負けない
という投資法があるのです。

それは・・・?

コイントス投資法とは?

一般的にコイントス投資法と言われる投資法のルールは以下の通りです。

  1. コインを投げて表が出たら買い、裏がでたら売り
  2. 利食いの幅と損切の幅は同一にする
  3. 1回に賭ける資金は最高2単位まで。
  4. 通常は、1単位だけ賭けるが、買った場合のみ、2単位を賭ける。負けた場合、2連勝した場合は、再度、1単位から賭け始める。

これを延々と繰り返していく投資法です。

コイントス投資で本当に負けないのか?

それでは、本当にこのコイントス投資法で負けないのか?
期待値を計算してみます。

まず、以下のルールに基づいて、どんなパターンがあるかを考えてみます。

通常は、1単位だけ賭けるが、買った場合のみ、2単位を賭ける。
負けた場合、2連勝した場合は、再度、1単位から賭け始める。

  • 1単位賭ける → 負ける → 初回に戻る
  • 1単位賭ける → 勝つ → 2単位賭ける 勝つ → 初回に戻る
  • 1単位賭ける → 勝つ → 2単位賭ける 負ける → 初回に戻る

そうすると、上記の3パターンが存在することが分かります。

1単位を1,000円として、コイントス投資法を実施した場合のそれぞれの期待値を計算します。

1回目に負ける確率と期待値

負ける確率50%

単純にコインを投げて買うか、売るかを決めるだけなので、勝率=負ける確率となり50%です。

期待値を求めるには、
負ける確率50%×-1,000円=-500円
になります。

1回目買って、2回目も勝つ場合の期待値

1回目に勝つ確率は50%ですが、2回目も勝つ確率は50%なので、
2連勝する確率は、
1回目勝率50%×2回目勝率50%=25%です。

また、1回目買った場合は、2回目の賭け金にしますので、
2連勝した場合は、1,000円+2,000円=3,000円の勝ちとなります。

期待値を求めるには、
確率25%×3,000円=750円
になります。

1回目買って、2回目は負ける場合の期待値

この場合の確率も同様に、1回目勝率50%×2回目負ける確率50%=25%です。

1回目買った場合は、2回目の賭け金を倍にしますので、
1勝1敗の場合は、1,000円-2,000円=-1,000円の負けとなります。

結果を表にまとめると、以下の通りになります。

NO 1回目 2回目
勝敗 賭け金 勝敗 賭け金 確率 期待値
1 負ける 1,000 50% -500
2 勝つ 1,000 負ける 2,000 25% -250
3 勝つ 1,000 勝つ 2,000 25% 750
合計 0

結果、総合的な期待値0円となります。
これでは、売買を繰り返すごとに、手数料分だけをすることとなります。

必勝法は存在するか?

上記のルールに基づくコイントス投資法は、勝負を続ければ続けるほど少しずつ負けがこんでくる実質的な必敗法でしたが、ルーレットなどの勝率50%のギャンブルで必勝法と呼ばれるものが存在します。

マーチンゲール法とは?

それが、マーチンゲール法と呼ばれるものです。

こちらのルールも簡単。

  1. 負ければ、賭け金を倍にする
  2. 買ったら、賭け金を最初の単位に戻す

コインを投げて表が出たら赤に賭ける。裏がでたら黒に賭けるといったやり方で実施すれば、これもコイントス投資法一種と考えられます。

このやり方ならば、常に、買った場合には、手元に最初の賭け金だけ残ります。
賭け金を1,000円で実施した場合の結果が下表のとおりです。

賭け金/回 累積賭け金 買った場合の利益
1 1,000 1,000 1,000
2 2,000 3,000 1,000
3 4,000 7,000 1,000
4 8,000 15,000 1,000
5 16,000 31,000 1,000
6 32,000 63,000 1,000
7 64,000 127,000 1,000
8 128,000 255,000 1,000
9 256,000 511,000 1,000
10 512,000 1,023,000 1,000

初回賭け金1,000円で始めると3回目の賭け金は4,000円となります。
買った場合は、8,000円の利益となり、それまでの累積賭け金7,000円を差し引いて1,000円の利益となります。

何回目で買っても利益は1,000円です。
しかし、10連敗するとなると、初回賭け金1,000円で始めても10回目の賭け金は50万円を超えてしまいます。

これでは、リスクが大きすぎて、現実的には、株やFX、日経225では利用できません。
また、実際の投資の場合は、買ったとしてもそれまでの損失を一気に取り戻せるかどうか分かりません。
さらに、1,000円/回しか勝てないのでは、手数料労力に見合った投資とは言えません。

コイントスでも勝つ方法

仕賭けよりも大切なポジションサイジングとは?

こうして見てくると、手数料も発生しますし、現実的コイントス勝てる投資方法はないような気がするかもしれません。

私が最初にコイントスで勝てる投資法があると読んだのはこちらの本です。

こちらのバン・K・タープ博士は、NLP(神経言語プログラミング)によるトレーダーのコーチングをしている方です。

この方の主張では、投資において重要なのは、仕掛けよりも重要なのはポジションサイジングだということです。

ポジションサイジングというと耳慣れない言葉なのですが、要は、自分の資金量に応じて、1回当たりの投資資金損切額を設定する詳細な資金管理の方法だということです。

博士によれば、しっかりした資金管理方法があれば、コイントスで売りか、買いかを決定したとしても長期的には利益になるということでした。

最初は、この意味が分かりませんでした。
また、とても自力でそんな仕組みが構築できるとも思えず、本を1回読んだだけで終わっていました。

しかし、何度もシステムを作っていくうちに、コイントス長期的利益が出る、少なくとも負けないシステムを構築することができました。

コイントスでも勝てる売買法

コイントスでも勝てる売買法は以下の通りです。

  1. 寄りで仕掛けて、引けで手仕舞いする
  2. 適切な損切幅を設定する
  3. 1回の取引でのリスクを総資産の1%以内にする

まだ、日経225でしか試してみませんが、流動性があり、比較的安定的な動きをしている市場であれば、他の市場でも通用するでしょう。

例:

  • 日経平均先物を寄付きで仕掛け、引けで手仕舞いする
  • 仕掛けにはコイントスを使い、が出れば買いが出れば売りとする
  • 損切幅は200円に設定する
  • 200万円の資金で日経225ミニ1枚を取引する

つまり、20,000円で購入した時は、19,800円に逆指値を置く。
利食い幅は設定せずに、毎日、引けで決済する。
200万円の資金で日経225ミニ1枚だけを取り引きする。

という方法です。

日経225ミニの場合、証拠金約7万円で1枚取引可能です。
レバレッジでいえば、30倍近いのですが、全くレバレッジをかけずに、ほぼレバレッジ1倍で取引します。

日経平均の場合、通常の日は200円程度の動きが多いのですが、時々、1日のうちに300円~400円上下する時があります。

この場合、200円で損切を設定していれば、最大損失は200円で済みます。
ただし、利益幅は限定していなければ、300円や400円儲かる日がしばしば発生します。

もちろん、損切を設定することで、引けまで持っていれば、損失が50円で収まったのに、損切を設定したことで、損失が200円まで膨らむ場合もあります。

あるいは、損切を設定していなければ、最終的に利益になるケースも発生します。

したがって、短期的には損切を設定しないほうがいいのかもしれませんが、長期的に見れば、損切を設定したほうが成績が安定します。

シミュレーションについては、実際に、何万回もコインを投げていられないため、仕掛けに関しては、Excelランダム関数を利用。数値が0.5より大きければ買い、そうでなければ売りというルールにしました。

何千回もシミュレーションしたわけではありませんので、100%勝てるとは言えませんが、1990年から約30年間のデータを使って、20回程度シミュレーションしたケースにおいては、ストップを設置した場合、30年間トータル利益は手数料を差し引いたとしても毎回プラスになっていました。

ただし、ストップ設定した場合、勝率は必ず50%未満にはなります。

もちろん、大儲けできるわけではなく、年間の平均利回りにすれば、3%10%前後でした。

最大ドローダウンについては、相当大きく、資金がマイナス75%になるケースがありました。

全ての市場や銘柄で適用できるわけではないと思いますが、結果として、
ポジションサイジング適切であれば、仕掛けランダムに行っても利益が出るというバン・K・タープ博士の主張は正しいように思われます。

本番での応用

仕掛けはコイントスでランダムに行っても利益が出るのであれば、以下の工夫をすれば、実際に利益が出る投資法が構築できそうです。

  • 勝率が50%を上回る仕組みを複数構築する
  • 複数システムを使ったポートフォリオを組んで運用する

仕掛けについては、コイントスよりも、もう少しマシな方法があるでしょう。

また、いくら素晴らしい投資システムがあったとしても、その投資システムが毎年素晴らしい利益を生むとは限りません。

あのウォーレン・バフェット氏であっても50年間の投資生活のうち、少なくとも2年はマイナスになった年があったということです。

その2年がいつ来るか分からないため、複数のシステムで運用すれば、安定した利益を上げられる確率が高くなるでしょう。