投資をしている方ならば、世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェット氏の名前を聞かれた方は多いと思います。
1965年に10万ドルで開始した資金を約50年間で800億ドルまでに増やしたという生きる伝説です。
こんな人ですから、生涯平均利回りは驚くほどに高いと思っていたのですが、実は毎年20%強だったということです。
日本やアメリカでも年率500%や1000%といった数字を残す人もいるようですが、それは、幸運に恵まれたごく短い期間での話であり、資産が数百億円を超えてからも毎年20%超の利回りを出す人は、ほとんどいないようです。
バフェット流はもう通用しない?
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一方、日本ではバフェット流の株式投資を真似て、資産数千億円とまでは言わないまでも数十億数百億円もの資産を築いたという話を聞きません。
また、バフェット氏がこれまで投資してきた会社は、コカ・コーラやワシントンポストといった企業であり、IT時代には乗り遅れたと言われています。しかし、業種は違えども根本的な考え方は、今でも十分に通用します。
この記事では、バフェット氏の投資手法を現在の日本でも取り入れられないかを検討しています。
ビジネスモデルから投資先を選定する
消費者独占型企業を買う
これまでバフェット氏が購入してきた銘柄はコカ・コーラやマクドナルドといった非常に強いブランド力を持った企業です。
確かに、これから食品産業でコカ・コーラやマクドナルドを超えるような企業は現れないのかもしれません。
バフェット氏自体は早い時期には投資を行いませんでしたが、GoogleやFacebook、AmazonやAppleは非常に強い消費者独占力を持っています。
私自身もスマホはずっとAppleのiPhoneを使っていますし、本を買うならセブンネットショッピングや楽天ブックスではなく、もっぱらAmazonを使っています。
残念ながら、こういった世界的な消費者独占型企業は、ほとんどがアメリカ発となっていますので、長期投資をするならば、アメリカ株の購入も検討するべきでしょう。
そういえば、30年近く前に上司がアメリカ企業の視察に行った際、「Yahooという凄い検索技術」を持った企業があると話をしていました。
今後もアメリカからは、多くの消費者独占型企業が出てくるでしょうから、そういったタイミングを見つければ、資産を10倍に増やせる可能性があります。
ただ、ソフトバンクの孫正義会長のように企業の将来性を見る力があるなら話は別ですが、一般人がビジネスモデルだけで10年後の企業の成長度を判断するのは非常に困難かもしれません。
約20年前、某企業で働いていた時は、DELLが一番大口のお客様でした。
その頃からDELLはインターネットでパソコンを販売していたのですが、当時、Amazonという会社がインターネットで本を売り出しているということが話題になっていました。
しかし、毎年赤字続きでいつ倒産してもおかしくないという噂もあり、とても株を買うという気にはなれませんでした。
単純なビジネスモデルの企業を買う
バフェット氏は、様々な業種が集まって成り立っているコングロマリット型の企業は避けているとのことです。
日本で言えば、東芝や日立のような会社です。
これらの会社は、設備投資も大きくなるため、1株当たりの利益(EPS)の伸びが悪いということです。
ここ数十年で株価が数十倍になった企業といえば、アメリカであれば、DELL、Amazon、Facebookなど、ビジネスモデル自体が非常に単純であり、かつ、設備投資もそれほど要らない会社が多いです。
日本でもセブンイレブン、Yahooなどは、生産工場を必要とするわけではなく、売上額から比べると非常に効率的な経営をしてきたと思われます。
消費者独占型企業や単純なビジネスモデルの企業を買うというのがバフェット流のやり方ですが、ビジネスモデルだけで判断して、こういった企業を買えるのかは、かなり疑問があります。
例えば、今になってみると、Amazonが話題になった頃に株を買っておけば良かったのですが、倒産する危険性もありました。
日本でもソフトバンクは借入金が大きすぎて倒産するのではないかという噂も流れました。
バフェット氏も2017年の株主総会でGoogleやAmazonに投資しなかったことを悔やんでいると発表したそうですが、バフェット氏ほど先見の明がある人でも購入できなかったのなら、一般人がビジネスモデルだけで判断するのは、かなり難しいでしょう。
また、バフェット氏は、2018年にはApple株を大量購入されましたが、iPhone自体の売上は縮小傾向であり、今後もApple社が以前ほどの伸びを維持できるのかは全く不透明です。
財務使用から投資先を選定する
ビジネスモデルだけから投資先を判断するのは一般投資家には困難かもしれません。
しかし、財務諸表から判断するやり方ならば、計算をするだけなので、誰でも同じようにできます。
バフェット氏が特に重視したのは以下の指標です。
毎年、EPSが伸びているか?
EPS(earnings per share)は1株当たり利益のことであり、
税引き利益÷発行済株式数で算出します。
当然、1株当たり利益が毎年20%~30%も上昇を継続する企業の株ならば、株価も長期的には上昇を続けていきます。
また、最近では、たとえ利益がそれほど増えなくとも自社株買いをする場合は、分母の発行済株式数が減るのでEPSが上昇します。
会社四季報では、過去4,5年、および、来期の予想が出ていますので、毎年、ほぼ連続してEPSが20~30%伸びている企業を選択するのは誰にでもできる銘柄選別方法です。
ただし、急成長している会社でもピタッと成長が止まる企業もあります。
2018年で言えば、それまで話題になっていたRizap、ZOZOTOWN、いきなりステーキ(ペッパーフードサービス)の株価は、あっという間に急落しました。
長期的にも消費者独占型企業であるかは十分に検討する必要があるでしょう。
ROEは高いか?
ROE(return on equity)とは株主資本利益率のことであり、
税引き利益÷株主資本で算出します。
バフェット氏は、特に、このROEを重視し、このROEから将来の企業価値を算出していました。
バフェット氏の考え方はこうです。
まず、企業の場合、経常利益から特別損益(会社の業務以外で発生した損益)と法人税を差し引いた後の利益が税引き利益や当期純利益と言われるものです。
そして、この税引き利益の中から配当を支払って、残りが内部留保となり、株主資本に追加されます。
仮に、税引き利益が100万円で株主資本が1,000万円だったとします。
すると、
ROE
=税引き利益÷株主資本
=100万円÷1000万円
=10%となります。
また、仮に、発行株式数が1万株だったとします。
この場合、
EPS
=税引き利益÷発行株式数=100万円÷1万株
=100円です。
そして、配当を1株につき30円株主に支払っていたとします。
すると、会社に残るお金は1株当たり100円-30円=70円となります。
発行株式数は1万株なので
1万株×70円=70万円が内部留保として残り、
会社の株主資本が来年度には1,070万円になり、7%増加します。
上記の例ではROEを10%としましたが、ROEが30%もあれば、企業はドンドン大きくなっていきます。
ROEの高い会社の例
例えば、Monotaro(3064)というインターネットで機械工具や事務用品を販売している会社があります。
この会社で2018年12月期を例に取りますと
EPS(一株当たり利益)38.32円
配当予想:13円
率にすると、税引き利益のうち、
配当に回る金額が13円÷38.32円=34%、
株主資本に回る金額が66%になります。
今後もROEが35%といった高い数値を維持できれば、株主資本、つまり企業規模は
毎年35%×66%=23.1%ずつ増えていく計算になります。
このペースを維持できれば、10年間で約8倍の会社規模となります。
現在の株価(2018年2月14日)は約2,500円近辺なので、10年後には20,000円近辺になっている可能性があります。
さらに、そのペースで伸び続ければ、配当も10年後には8倍の100円程度になることが予想されます。
今後10年間同じ伸びを示すかは分かりませんが、過去5年間を見る限りでは、バフェット氏の計算通りの結果となっており、株価は過去5年で2.5倍以上になっています。
株をいつ買うか?
バフェット氏流の長期投資では、いかに株を安い時に仕込むかがポイントとなります。
特に、成長株ほど株価の動きがトヨタ自動車のような大型株に比べ激しくなります。
最近では、日経平均が1日で1,000円近く下がる場合が年に数回ありますので、こういったタイミングで購入されることをオススメします。
まとめ
- 財務諸表を分析して成長している会社を選ぶ。
- その会社の成長が一時的なブームではないかを検討する。
- 日経平均が急落するのを待って、その会社の株を買う。
これならば、バフェット氏のように天才的な能力がなくとも誰にでもできる方法でしょう。