PERが低ければ買い?株の「割安」を考える最初の一歩

株価が1,000円の会社と5,000円の会社なら、1,000円の会社のほうが安いのでしょうか。

前の記事で見たように、株価だけでは会社の大きさや企業価値は分かりません。そこで銘柄選びに使われるのがPERやPBRという指標です。証券会社の画面にも表示されるため、「PERが低い株を買えばよい」と考えたくなります。

しかし、PERは割安株を自動で見つける数字ではありません。利益が一時的に多い会社、成長が鈍ると見られている会社、赤字の会社では読み方が変わります。

この記事では、PERとEPSの関係、PBRとの違い、低PERでも注意したい理由を、初心者向けに数字で説明します。

PERは「利益の何倍まで買われているか」

PERは株価収益率と呼ばれ、次の式で計算します。

PER = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)

たとえば、株価1,000円、EPS100円の会社ならPERは10倍です。株価2,000円、EPS200円の会社もPERは10倍です。株価が違っても、1株当たり利益との関係は同じです。

EPSは、会社の純利益を発行済株式数で割ったものです。会社全体で考えるなら、PERは「時価総額 ÷ 純利益」とほぼ同じ意味になります。会社の利益に対して、市場がどれだけの価格を付けているかを見る指標です。

PER10倍だから「10年で元が取れる」と単純に考えるのは正確ではありません。会社が利益をすべて配当するわけではなく、利益は毎年変わります。将来の成長期待や事業リスクも株価へ織り込まれます。

PERが低い理由を考える

同じ業種で似た会社を比べたとき、PERが低い会社は割安に見えます。ただし、市場が低い価格を付けているのには理由があるかもしれません。

成長が止まると見られている

現在の利益が多くても、来期以降に減益が予想されていれば、株価は上がりにくくなります。PERの分母には現在または予想利益を使いますが、市場はその先まで見ています。

利益が一時的に増えている

不動産や保有株の売却など、本業以外の一時的な利益で純利益が増えると、PERは低く見えます。翌年に同じ利益がなければ、見かけ上の割安さは消えます。

景気の波が大きい

景気敏感企業では、利益が最も多い局面でPERが低くなり、景気後退で利益が減るとPERが上がることがあります。「低PERだから安全」とは限りません。

財務や事業に不安がある

借入が大きい、主要顧客への依存度が高い、競争力が弱まっているなど、利益だけでは表れにくいリスクもあります。市場がその不安を価格へ反映している可能性があります。

赤字企業ではPERを使えない

純利益がマイナスならEPSもマイナスになり、通常のPERは意味を持ちません。成長投資中の会社では赤字でも将来性がある場合がありますが、その判断には売上成長、粗利益、営業キャッシュフロー、資金余力など別の情報が必要です。

つまり、PERが低いことは結論ではなく、「なぜ低いのか」を調べる出発点です。

PBRは「純資産の何倍まで買われているか」

PBRは株価純資産倍率と呼ばれ、次の式で計算します。

PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)

会社全体で考えるなら「時価総額 ÷ 純資産」です。PERが利益に対する価格を見るのに対し、PBRは会社が持つ純資産に対する価格を見ます。

PBR1倍なら、株価と1株当たり純資産が同じ水準です。1倍未満だと「会社を解散して資産を分けたほうが得」と説明されることがありますが、現実はそれほど単純ではありません。

帳簿に載っている資産がそのまま現金化できるとは限りません。設備や在庫の価値が下がることもあります。事業をやめるには費用がかかり、従業員や取引先への責任もあります。収益力が低いためにPBRが低い会社もあります。

PERとPBRは何が違う?

PERは「利益を生む力に対する価格」、PBRは「蓄積した純資産に対する価格」を見る指標です。

利益が安定している会社ではPERを比較しやすく、資産を多く持つ金融業や製造業ではPBRも参考になります。一方、ブランド、ソフトウェア、人材、顧客基盤など、帳簿に十分表れない無形の強みが大きい会社では、PBRだけで価値を判断しにくくなります。

どちらか一つで決めるのではなく、利益、資産、成長性、財務を組み合わせて見ます。

「何倍なら安い?」に共通の答えはない

PER15倍以下なら安い、PBR1倍以下なら買い、といった一律の基準は便利ですが、業種や成長段階が違えば適正な水準も変わります。

売上と利益が毎年伸び、競争優位を強めている会社には高いPERが付くことがあります。反対に、利益が減ると予想される会社はPERが低くても、株価がさらに下がることがあります。

比較するときは、次の順番が分かりやすいです。

1. 同じ業種・似た事業モデルの会社と比べる

2. その会社の過去数年のPERやPBRと比べる

3. 今の利益が一時的でないか確認する

4. 売上と利益の成長率、利益率を確認する

5. 借入、キャッシュフロー、事業リスクを確認する

低PERを見つけたら、この5項目で「安い理由」と「低く評価される理由」を分けます。

具体例:低PER株と高PER株

A社はPER8倍、B社はPER25倍だとします。数字だけならA社が割安です。

しかし、A社の利益が今期をピークに毎年減ると予想され、B社の利益が今後数年伸びると見込まれているなら、市場の評価差には理由があります。B社の成長が期待ほど進まなければ株価は下がりますし、A社の業績が予想より粘れば見直されるかもしれません。

大切なのは、どちらが必ず上がるかを断定することではありません。現在の株価が、どのような将来を前提にしているかを考えることです。

初心者が最初に作る割安チェック

銘柄を調べるとき、次の質問をメモしてください。

・PERは同業他社と比べて高いか低いか

・使われているEPSは実績か会社予想か

・利益に一時要因が含まれていないか

・赤字なら、PER以外の何を見るか

・PBRが低い理由は資産価値か、収益力の低さか

・成長期待が外れたときのリスクは何か

このメモがあれば、「PERが低いから買う」から「低い理由を調べてから判断する」へ進めます。

まとめ:割安は数字ではなく、前提との比較

PERは利益に対する価格、PBRは純資産に対する価格を表します。どちらも便利な比較道具ですが、低ければ自動的に割安という意味ではありません。

利益の質、業種、成長期待、財務、事業リスクを確認し、同業他社や自社の過去と比べて初めて数字に意味が生まれます。

次の記事では、自己資本からどれだけ利益を生み出したかを見るROEを取り上げます。PERやPBRと合わせると、「安く見える会社」と「資本を効率よく使う会社」の違いを考えやすくなります。

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