伝説のファンド・マネージャー ピーター・リンチ
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アメリカの伝説のファンド・マネージャーと言われたピーター・リンチ氏をご存知でしょうか?
ピーター・リンチ氏はマゼラン・ファンドの責任者であった1977年から1990年の間に、平均29.2%の年間リターンを達成したということです。
これは、1977年に100万円投資していれば、13年後には2700万円へ。もしくは、毎月5万円積立投資をしていれば、13年後には約6,000万円にもなります。
世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェット氏の平均年利が20%ということですから、それに勝るとも劣らない数字です。
そして、この間にマゼラン・ファンドの運用資産は1,800万ドルから140億ドルに増加。
通常、ファンドの成績は資金が大きくなればなるほど悪化していきますが、マゼラン・ファンドはほぼ一貫して全投資信託の中で上位2%をキープしていたということです。
また、最近では、日本でも株価が10倍になるような株のことをテンバガー株と呼びますが、テンバガーという言葉を最初に使ったのもピーター・リンチ氏と言われています。
さて、そのピーター・リンチの一貫した意見としては、一般的なファンド・マネジャーよりも個人投資家のほうがプレッシャーもなく、良い成績を上げられる可能性があるということです。
例えば、ファンド・マネージャーのなかには「IBMを買っておけば馘にならない」という格言があるそうです。
これは、誰も知らないような上場間もない会社の株を買って、大きく損を出せば、解雇される可能性があります。しかし、IBMのような巨大企業の株を買えば、たとえ、利益が出なくても、上司から叱責される可能性が少ないということです。
ファンド・マネージャーと言えどもほとんどの人は会社員であり、まず、自分の地位を守るために保守的な運用をしがちであるということです。
ただ、個人投資家の場合であれば、どのような運用をしようとも自由です。自由なだけ規律のないギャンブル的な投資をする可能性もありますが、ファンド・マネージャーより積極的な運用も可能ということです。
ピーター・リンチ氏と同じ考え方を適用できれば、私たちも資産を10倍以上にできるかもしれません。
さて、ピーター・リンチ氏の資産を10倍にする方法とは?
ピーター・リンチ氏とウォーレン・バフェット氏との共通点
まずは、ウォーレン・バフェット氏との共通点を見てみましょう。世界最高峰の投資家二人が共通して重視する指標があれば、これは外せないです。
自分がよく理解できる会社の株を買う
「自分がよく理解できる会社の株を買う」というのは、一般投資家でも真似ができる重要ポイントです。
二人の成功事例によく食品会社が登場します。
バフェットの例で言えば、コカ・コーラやマクドナルド、リンチの場合は、ダンキン・ドーナツ。二人が好んで利用していた会社であり、これは伸びると思った会社の財務分析などを行ったうえで、その会社に投資をするということです。
これなら、日本の一般投資家でも真似ができそうです。
そういえば、もう今から30年も前になりますが、私が大学時代に任天堂が任天堂ファミリーコンピュータを発売しました。
それまで任天堂と言えば、トランプや花札の会社という認識でしたから、「凄い商品を開発したなあ」と非常に驚きでした。そして、その後、すぐに、任天堂の株価はうなぎのぼりに上がっていきました。
そういえば、セブンイレブンなどのコンビニエンスストアが流行り出したのも、30年前くらいでした。これも当時としては、画期的なサービスでした。
この頃、これらの会社の株を購入していれば、資産は数十倍になったでしょう。そして、これからもこういった会社やサービスは生まれてくるに違いありません。
財務諸表を重視する
ただ、やはり二人とも会社のサービス内容だけではなく、財務諸表も重視します。
新規公開株を見ていても、業績の波が非常に大きい会社と売上・利益ともに毎年安定して伸びている会社があります。
また、長期的に成長する株は、同じ業界のなかでも、やはりずば抜けて売上高経常利益率が高いようです。
筆者は、20年以上前、村田製作所に勤務していました。
その頃の売上高経常利益率は20%を超えており、同業他社に比べても圧倒的に優れた財務体質を持っていました。
とにかく経理部から徹底したコスト意識を植え付けられていたように思います。当時は、「なんて厳しい会社なんだ」という認識しかありませんでした。しかし、それから20年間で売上も株価も10倍以上に成長し、日本で最大級の電子部品メーカーに成長しました。
経常利益率は業界によって大きく異なります。その会社の時系列での業績を見るだけでなく、同業他社と比較することによっても、今後の成長性が予測できます。
二人ともITには弱い
これは、唯一のバフェット氏とリンチ氏の弱点かもしれません。
二人ともITの操作を苦手としており、その結果、これまでGAFAなどに代表されるIT産業にはあまり投資してこなかったようです。ただ、IT業界は、非常に浮き沈みの激しい業界でもあり、それが結果的に資産を減らさなかった秘訣なのかもしれません。
ただ、バフェット氏やリンチ氏の考え方を応用すれば、IT業界の株でも購入できるチャンスはあるでしょう。
そういえば、30年くらい前、当時の上司が電機業界の集まりでアメリカの成長企業の視察に行きました。その視察で一番驚いたと言っていたのが、Yahooの検索技術でした。当時、まだ、インターネットという言葉も普及していなかった頃ですが、「コンピュータで、あっという間に様々な情報を検索できる技術がある」と驚いていました。
もちろん、Yahooが、その後、巨大企業に成長したのはご存知の通りです。
バフェットとリンチの「いいとこ取り」投資法
ここまで二人の共通点を見てきました。
二人ともファンダメンタル派の長期投資家であり、似たような投資方法ですが、あえて相違点をあげるなら、次の点ではないかと筆者は感じています。
バフェット氏の最大の特徴 ROE重視
ROE(return on equity)とは株主資本利益率のことであり、税引き利益÷株主資本で算出します。
バフェット氏は、特に、このROEを重視し、このROEから将来の企業価値を算出していました。
バフェット氏の考え方はこうです。
まず、企業の場合、経常利益から特別損益(会社の業務以外で発生した損益)と法人税を差し引いた後の利益が税引き利益や当期純利益と言われるものです。
そして、この税引き利益の中から配当を支払って、残りが内部留保となり、株主資本に追加されます。
仮に、税引き利益が100万円で株主資本が1,000万円だったとします。
すると、
ROE=税引き利益÷株主資本=100万円÷1000万円=10%
また、仮に、発行株式数が1万株だったとします。
この場合、
EPS=税引き利益÷発行株式数=100万円÷1万株=100円
そして、配当を1株につき30円株主に支払っていたとします。すると、会社に残るお金は1株当たり100円-30円=70円となります。
発行株式数は1万株なので1万株×70円=70万円が内部留保として残り、会社の株主資本が来年度には1,070万円になり、7%増加します。
上記の例ではROEを10%としましたが、ROEが30%もあれば、企業はドンドン大きくなっていきます。
ROEの高い会社の例
例えば、Monotaro(3064)というインターネットで機械工具や事務用品を販売している会社があります。
この会社で2018年12月期を例に取りますと
EPS(一株当たり利益)38.32円
配当予想:13円
率にすると、税引き利益のうち、
配当に回る金額が13円÷38.32円=34%、
株主資本に回る金額が66%になります
MonotaROは毎年ROE35%以上という非常に高い数値を出していました。今後もこのレベルの高い数値を維持できれば、株主資本、つまり企業規模は毎年35%×66%=23.1%ずつ増えていく計算になります。
このペースを維持できれば、10年間で約8倍の会社規模となります。
現在の株価(2018年2月14日)は約2,500円近辺なので、10年後には20,000円近辺になっている可能性があります。
さらに、そのペースで伸び続ければ、配当も10年後には8倍の100円程度になることが予想されます。
今後10年間同じ伸びを示すかは分かりませんが、過去5年間を見る限りでは、バフェット氏の計算通りの結果となっており、株価は過去5年で2.5倍以上になっています。
筆者がメインで利用しているGMOクリック証券では、ROEのランキング上位の会社がワンクリックで見られます。確かに、ROEの高い会社は株価が10倍になっているということが、よく分かります。
≪GMOクリック証券≫操作性・機能性に優れた使いやすいと好評の無料取引ツールが充実!リンチ氏の特徴 多くの銘柄を買う
ウォーレン・バフェット氏は、できるだけ少数の銘柄への集中投資を勧めています。
しかし、誰もがバフェット氏のように適格にテンバガー株を見つけられるとは限りません。最大の問題は長期投資の場合、その結果が分かるのが10年後になってしまうということです。
「これは」と思って投資した株が10年経過しても、価格が上がらないどころか下がっているケースも数多くあります。
一方、リンチ氏の場合、自分のファンドで最大1,400銘柄も保有していたことがあるそうです。
例えば、仮に、10銘柄にそれぞれ100万円ずつ分散投資をして、1銘柄だけ10倍になった。しかし、残りの9銘柄については、2倍にしかならなかった、と仮定してみましょう。
この場合、トータル資金はどのくらい増加しているでしょうか?
当初資金 100万円×10銘柄=1,000万円
10年後 100万円×10倍×1銘柄=1,000万円
100万円× 2倍×9銘柄=1,800万円
合計 2,800万円
10年間で資産が2.8倍。年利に換算すれば、約10%です。
さすがに、リンチ氏の年利29%といったレベルにはなりませんが、決して、悪くはない数値です。これくらいなら、一般の個人投資家でも実現可能なレベルではないでしょうか?
リンチ氏の特徴 小売業を買う
リンチ氏によれば、
「この10年間でベストの値上がりとなったものの幾つかは(その前の10年間と同様)、伝統的な小売業だった。それらが上手に経営されていることは、何百万人もの買い物客が真っ先に経験していることとである」
ということでした。
私が最初にこの記事を読んだときは、この内容を全く理解できずに読み飛ばしてしまいました。
例えば、最近のIPO株を見ていると、大きく値を上げているのはAI関連銘柄です。
バイオ関連株やゲーム機関連株が値を飛ばしていることもありました。
そういった時流に乗った株から10倍株が出てくると思っていたからです。
しかし、ここ20-30年を振り返ってみると、バイオ関連やAI関連など、一般市民にはあまり馴染みのない株よりも小売業、もしくは、消費者直結型の会社のなかに、10倍以上の株価になっている会社が数多くあります。
誰でも、いくつか知っている株をいくつかあげてみると・・・
- セブン・イレブン
- Amazon
- 任天堂
- ユニクロ(ファーストリテイリング)
- ZOZO
- MonotaRO
* MonotaROに関しては、機械工具の専門商社なので、一般市民には、あまり馴染みがないかもしれませんが。
ピーター・リンチとウォーレン・バフェットの大化け株を見つける方法
ピーター・リンチ氏とウォーレン・バフェット氏の考え方を統合すると以下の投資方法が考えられます。
- 10倍株は新規公開株(IPO)から生まれる
- IPO株の中から、以下の条件に合致する会社の株を買う(抽選に当たればベストですが、今後、10年間成長が見込める株であれば、上場時の始値で購入しても十分にペイできるはずです)
・自分がよく理解できる会社(小売業や消費者直結型の企業)
・過去数年間、毎年、売上が25-30%伸びている会社
・ROEが30%以上の会社
ここ10年間で10倍以上になったMonotaROやZOZOは、これらの条件を満たしています。
もし、60年前にパークシャー・ハサウエイを買っていたら?
ウォーレン・バフェットが率いるパークシャー・ハサウエイですが、もし、1960年に株を購入していたら、2020年にはいくらになっていたでしょうか?
1960年 7ドル/株
1989年 4900ドル/株
2020年 286,090ドル/株
最初の30年間で700倍。次の30年間で、さすがに伸び率は落ちましたが、それでも約60倍。
この60年間でなんと40,870倍になっています。
60年前にランチ1回分我慢していたら、家が一軒買えるようになっていたという計算になります。
2020年、世界はコロナウイルスで大混乱に陥っていますが、一方、大きな変化が生まれる節目の年になるだろうとも言われています。
バフェット氏やリンチ氏を見習って、未来の大化け株を発掘していきましょう。
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