「売上が伸びている会社は、成長企業と考えてよいのでしょうか」
決算で前年より売上が増えていると、順調に見えます。しかし、1年だけの伸びでは成長の強さは判断できません。値上げで売上が増えただけかもしれませんし、企業買収や一時的な特需が影響している場合もあります。
会社の成長を見るには、売上と利益だけでなく、顧客数、単価、販売数量、継続率など、その会社の事業を動かす数字を数年分並べることが大切です。
この記事では、初心者でも企業の成長を確認できるように、数字のそろえ方、成長率の見方、会社固有の重要指標を解説します。
最初に「同じ条件」で数年分を並べる
Contents
成長を見るときは、最低でも3〜5年分の数字を同じ条件で並べます。
比較する期間をそろえる
四半期と通期、9か月累計と12か月を混ぜると、正しい比較ができません。まずは各年度の通期実績を並べ、その後に直近四半期の動きを確認します。
会社が決算期を変更した場合は、1年未満または1年超の変則決算になることがあります。その年だけ成長率が不自然になるため、対象期間を確認しましょう。
単位と会計基準をそろえる
資料によって金額の単位が「百万円」「億円」と異なることがあります。日本基準からIFRSへ変更した会社では、利益の名称や計算方法が変わる場合もあります。
数字を表へ写す前に、期間、通貨、単位、会計基準を記録します。AIへ整理を頼む場合も、この4点を明示すると誤比較を減らせます。
売上と利益をセットで見る
売上は事業の規模、利益は稼ぐ力を示します。どちらか一方だけでは、成長の質は分かりません。
たとえば、売上が毎年20%増えていても、営業利益が横ばいなら、値下げや広告費、人件費、原材料費の増加で利益が残っていない可能性があります。
反対に、売上成長が10%でも、営業利益が20%伸びているなら、規模の拡大とともに利益率が改善しているかもしれません。
確認したい基本項目は次の通りです。
- 売上高
- 営業利益
- 営業利益率
- 純利益
- 1株当たり利益(EPS)
- 営業キャッシュフロー
営業利益率は、営業利益を売上高で割って求めます。売上が増えながら利益率も上がっている会社は、固定費を効率よく使えている可能性があります。
ただし、広告を減らして一時的に利益を増やした、研究開発を先送りした、といった場合もあります。利益率の変化は、決算説明資料の理由とセットで確認します。
成長率は「率」と「金額」を両方見る
売上が100億円から120億円になれば、増加額は20億円、成長率は20%です。
翌年に120億円から138億円になれば、増加額は18億円、成長率は15%です。売上は増えていますが、伸びる速度は鈍っています。
成長率だけを見ると15%は高く見えます。しかし、前年の20%から低下しているため、成長の勢いは弱まっています。
一方、会社の規模が大きくなると、高い成長率を維持するのは難しくなります。小さな会社の30%成長と、大企業の10%成長を同じ基準で比べることはできません。
前年同期比に加えて、3〜5年の傾向と増加額も見ましょう。
売上を「顧客数×単価×利用頻度」に分ける
売上が増えた理由を理解するには、事業を構成する要素へ分解します。
多くの事業では、売上を次のように考えられます。
売上=顧客数×顧客単価×利用頻度
小売なら、来店客数、購入単価、購入回数。
ネット通販なら、利用者数、注文単価、注文頻度。
サブスクリプションなら、契約者数、月額単価、解約率。
製造業なら、販売数量、製品単価、製品構成。
売上20%増でも、顧客数が20%増えたのか、値上げで単価が20%上がったのかで意味は違います。
顧客数が増え、1人当たりの利用額も上がっているなら、成長の幅は広いと考えられます。値上げだけで売上が増え、顧客数が減っているなら、その成長が続くかを慎重に見ます。
会社固有の重要指標を探す
すべての会社に共通する数字だけでは、事業の実態を十分に捉えられません。
会社が決算説明資料で継続して開示している指標に注目しましょう。
SaaS企業なら契約社数、解約率、顧客当たり売上。
EC企業なら利用者数、注文回数、平均注文額。
人材会社なら登録者数、稼働人数、成約数。
店舗型企業なら店舗数、既存店売上、客数、客単価。
半導体企業なら出荷数量、平均販売単価、設備稼働率。
重要なのは、その数字が売上や利益につながる因果関係を説明できることです。
新規契約が増えても解約も増えているなら、契約社数だけでは成長を判断できません。店舗数が増えても既存店売上が落ちているなら、新店を出し続けなければ成長を維持できない可能性があります。
簡単な成長確認表を作る
初心者は、次の項目を5年分並べるところから始めると分かりやすくなります。
- 年度
- 売上高と前年比
- 営業利益と前年比
- 営業利益率
- EPS
- 営業キャッシュフロー
- 顧客数または会社固有の重要指標
- 重要な出来事
最後の「重要な出来事」には、企業買収、大型商品の発売、値上げ、決算期変更、一時的な特需などを書きます。
数字が急に変わった年に理由を添えると、継続的な成長と一時要因を分けやすくなります。
数字を見る順番
成長企業を調べるときは、次の順番にすると整理しやすくなります。
1. 売上、利益、利益率を3〜5年分並べる。
2. 売上を顧客数、単価、数量、頻度へ分ける。
3. 会社固有の重要指標を一つか二つ選ぶ。
4. 急な変化があった年の理由を決算資料で確認する。
5. 営業キャッシュフローが利益についてきているかを見る。
6. 今後も伸びる前提と、崩れる条件を文章にする。
AIを使う場合は、表作成や成長率計算を任せられます。ただし、期間、単位、会計基準、指標の定義は原文で確認してください。AIが異なる定義の数字を同じ列に並べる可能性があるためです。
まとめ
会社の成長は、1年の売上増加だけでは判断できません。
売上と利益を数年分そろえ、利益率とキャッシュフローを確認し、売上を顧客数・単価・数量・頻度へ分解します。さらに、会社固有の重要指標まで追うと、成長の理由と持続性が見えてきます。
最初から多くの指標を集める必要はありません。売上、営業利益、利益率、営業キャッシュフロー、顧客数などの重要指標を一つ。この5項目を5年分並べるだけでも、企業を見る目は大きく変わります。
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