成功した投資家の多くが損切が躊躇なくできるようになれば、投資で安定した利益を出せるようになると言います。
しかし、多くの個人投資家は適切な方法で損切ができずに市場から撤退していきます。
この記事では適切な損切の設定方法を書いています。
損切とは?
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投資において相場が自分の思惑とは違う方向に動いてしまい、自分の意志で決済し損を確定させることを損切と呼びます。
英語では損失の拡大をストップさせることから、ストップロス(Stoploss)と言います。
また、損失を確定させる逆指値注文の位置をストップと呼びます。
例:
1,000円でA株を100株購入
900円まで下がったら損切する場合
900円に逆指値注文(900円以下になれば、成行で売り注文)
この損切が適切にできるようになれば、塩漬け株を持って身動きできなくなるといった事態も発生しません。
なぜ、損切ができないのか?
ところが多くの人がこの損切ができません。損切ができない理由は、主に以下の3点です。
根拠のない希望的観測を持ってしまう
損切できない多くの人に、損切をすべきだと言うと返ってくる答えがこれです。
「これから上がるかもしれない」
確かに、上がるかもしれないのですが、下がるかもしれません。
1,000円で買った株が500円に下がれば、その損を取り返すには株価が2倍になる必要があります。
自分の持ち株が2倍になるまで保有していたという経験は、なかなかできるものではありません。
損を確定させるのが嫌
「今、売れば損をする」
これも損切ができない人からよく聞く言葉です。
投資で安定して利益を生むためには損小利大を徹底させることと言われます。
行動経済学では、人間の心理として、そもそも損失回避バイアスを持っていると言われています。
これは、1万円の利益を得る喜びと、1万円の損をする悲しみを比べると、損をする悲しみのほうが大きいということです。
このため、株を買った場合には、10%程度の値上がりで利食いをしてしまうのですが、30%下がっても売らない、結果的に損大利小の状態になる人が多いのです。
自分の間違いを認めたくない
株を買う場合は、誰でも何らかの根拠があって、株を買います。
しかし、損切をすることは、その時、自分が考えた根拠や考えが間違っていたと認めることとなります。
つまり、自分の考えや信念とは反対の行動を取らなければならないのです。
これが、ほとんどの人にとって損切が困難な心理的な理由です。
損切のメリット・デメリット
しかし、躊躇なく損切ができるようになれば、大きなメリットがあります。
損切のメリット
含み損が拡大するのを防ぐことができる
投資で損をするほとんどの人が自分の思惑とは逆行しているのに、損切をしないことです。
このため、投資資金を半減、場合によってはゼロにしてしまう人が数多くいます。
適切な方法で損切を遵守すれば、含み損がドンドン大きくなることはありません。
資金効率が良くなる
もうひとつ大きなメリットが資金効率が良くなることです。
デイトレーダーのような取引をしている人は別として、一般の個人投資家は常に投資をし続けている必要はありません。
安いところで買って高いところで売る
これだけで、いいのです。
損切ができない人は
「今、株を売ったら、損をする。売ったとして、次は、何を買えばいいんだ」
とよく言いますが、すぐに、別の株を買う必要はありません。
お目当ての株が下がった時に買えばいいのです。
どんな株、あるいは、市場でも年に数回は大きく下がる時があります。
それまで現金で保有しておき、そんな時に購入すれば、短期間で大きな利益になる可能性があります。
損切のデメリット
損切した後に、上がってしまうと、悔しい思いをする
しかし、損切のデメリットとしては、これくらいなのです。
それに、投資で100%利益が出るはずもありません。
悔しい思いよりも資金管理に焦点を当てましょう。
ナンピンはやるべきか?
損切の代わりにナンピンをするという方法もあります。
しかし、これは、最初からナンピンをするという計画であれば、別ですが、そうでなければ、どこまで下がるか分かりません。
昔の日本の相場師はナンピン買い下がりをする人が多かったとのことです。
例えば、ある株を
1,000円 100株
900円 1,000株
800円 3,000株
と買い下がっていく方法です。
しかも買い下がるにつれて購入株数を大きくしていきます。
確かに平均値は安くなるのですが、買い下がる度に含み損が大きくなり、ストレスも増えてしまいます。買い下がりはプロだから出来ることです。
一般の個人投資家には、どこまで下がるかが全く読めません。
ナンピンよりも簡単で安全な損切をオススメします。
損切幅の決め方
実は、損切幅の設定は、投資スタイルによって大きく異なるため、一概に正解と言えるものがありません。
デイトレの場合は、取引回数が多いため、損切幅は小さくなりますし、長期投資の場合は、ある程度大きくなってしまいます。
ただ、損切の目的は、資産の減少を抑えることにありますので、できるだけ1回の取引で大幅に資産が減少しない方法を自分の投資スタイルに合わせて採用すべきです。
投資資金の2%以内
アメリカの成功した投資家によれば、1回の取引でのリスク、つまり1回の取引における最大損失幅を投資資金の2%以内に抑えなさいということです。
確かに、これなら、10連敗しても資産の減少率は20%以内に収まります。
FXや日経225先物などの場合は、ほぼ24時間近く市場が開いていますので、損切幅を単に2%で設定し、その位置に逆指値注文をセットするだけで、この基準が守れます。
ただ、株式の場合は日中しか市場が開いていません。
夜中の間にNYダウが暴落して、保有していた株が翌日の寄付きには大幅な下げになってしまったということがよくあります。
このため、株の場合は、できるだけ分散投資を行い、かつ、異なる業界(自動車、建設、医薬品、小売り、電気など)の株を購入することで、2%/回という基準に近づけることができます。
例:投資金額50万円の場合
自動車 A株 1,000円×100株 → 900円で損切 最大損失額 1万円
建設 B株 1,000円×100株 → 900円で損切 最大損失額 1万円
医薬品 C株 1,000円×100株 → 900円で損切 最大損失額 1万円
小売り D株 1,000円×100株 → 900円で損切 最大損失額 1万円
電気 E株 1,000円×100株 → 900円で損切 最大損失額 1万円
こうすれば、1銘柄当たりの最大損失額は1万円となり、1回当たりの損失は1万円÷50万円=2%以内となります。
現実的には、ダウが1,000ドルも下げた時は、ほとんど全ての株が下げますので、株式市場だけで2%の損失に抑えるのは困難な場合もあります。
それでも、この方法を採用するだけでも損失は相当少なくなります。
エントリーの根拠がくずれた場合に損切する方法
テクニカルトレードの場合は、上記のように損切を仕掛値の率や値幅で決めるのに加えて、エントリーの根拠がくずれた場合に損切する方法があります。
例えば、5日移動平均線が25日移動平均線を上抜いた場合に仕掛ける、いわゆるゴールデンクロスで仕掛けるというルールだった場合、再度、5日移動平均線が25日移動平均線を下抜いた場合に損切するという方法です。
ただ、この方法で長い時間軸(例えば週足)を採用している場合は、損切の位置が仕掛値から大きく外れてしまう場合がありますので、上記の値幅や率と組み合わせて使用するのがいいでしょう。
ATRから購入株数を決定する方法
さらに、システマティックな方法がATRと損失額から購入株数を決めるというやり方です。
ATRとはAverage True Rangeの略で一日の値動きを意味します。
つまり、1日で価格変動が10%もあるような株については、値下がりした場合のリスクも大きいため、購入数を減らし、価格変動が小さな株は購入数を増やすことで、全体のリスクを下げましょうという方法です。
例えば、ある銘柄のATRが20円、最小取引単位が100株だったとします。
そうすると予想損失額/日は
ATR(1日の値動き)20円×100株=2,000円となります。
そして、投資資金は100万円で取引1回当たりの最大損失幅は資金全体の2%に設定するとします。
そうすると、1回の取引で100万円×2%=2万円までの損失は許容範囲ということになります。
購入可能株数は、以下の計算式で求められます。
2万円(1回の取引における最大損失許容額)÷2,000円(予想損失額/日)×100株(最小取引単位)=1,000株
まとめますと、以下の通りになります。
- 1回の取引における最大損失許容額を求める
- 投資金額×2%
- 購入予定銘柄(もしくは通貨や市場)のATRを求める
- 予想損失額/日を求める
- ATR×最小取引単位
- 購入可能株数を算出する
- 1回の取引における最大損失許容額÷予想損失額/日×最小取引単位
こうすることでATRの大きな株は少なく、小さな株は多めに買うことができ、全体のリスクを安定させることができます。
ただし、この方法でも5銘柄購入すると、最大リスクは2%×5銘柄=10%となります。
日経平均が1日で1,000円も急落する場合は、全ての銘柄で損切に引っ掛かる可能性もありますので、やはり安い時に買うのは投資で利益を上げるためには必須です。
ATRの求め方
それでは、ATRの求め方ですが、まず、1日の最大値幅(True Range=TR)を求めて、その値幅を平均します。
平均の日数ですが20日間がよく使われるようです。
1日の最大値幅ですが、株の場合は、ギャップを空けて寄り付くことも多いため、当日の高値と安値の幅だけでなく、前日の終値も考慮し、以下の3つの値幅を計算して、3つの値幅のうち、最大値幅をTRとします。
当日の高値-前日の終値
例:
前日終値 1,000円
当日
始値 1,020円
安値 1,020円
高値 1,100円
TR=1,100円(高値)-1,000円(前日終値)=100円
当日、ギャップを空けて寄付き、そのまま上昇していったようなパターンの場合は、当日高値-前日終値が最も大きな値幅になります。
前日の終値-当日の安値
例:
前日 終値 1,000円
当日
始値 980円
安値 900円
高値 980円
TR=1,000円(前日終値)-900円(安値)=100円
当日、ギャップを空けて寄付き、そのまま下がってくパターンの場合には、前日終値-当日安値が最も値幅が大きくなります。
当日高値-当日安値
例:
前日 終値 1,000円
当日
始値 1,010円
安値 950円
高値 1,050円
TR=1,050円(高値)-950円(安値)=100円
一番よく見られるパターンで、前日の終値が当日高値と安値の間に収まっています。
こうして、毎日のTRを計算し、それを20日間平均することで、ATRを算出します。
もちろん、暴落時・急騰時にはATRも大きく変動しますが、こうして1取引当たりのリスクを2%に限定し、なおかつ、約定後、すぐに損切の逆指値注文を入れることで、投資の成績は非常に安定してきます。
本来は、株式市場だけでなく、商品先物やFX、しかもFXであればドル円ではなく日経平均の値動きとあまり関係性のない通貨に分散投資をしたほうが安定感が増します。
ただ、一般投資家がそこまで分散するのは労力的にもかなり大変なので、まずは、自分の可能な範囲で損切2%ルールを徹底しましょう。
これだけでも相当成績が安定してくるはずです。