うねり取りという手法があります。
日本の昔の相場師が使っていた手法で、相場の波(うねり)に乗って、利益を上げようという手法です。
相場師でもあり、数多くの投資関連書籍を出しておられる林輝太郎氏が強く推薦されていた手法です。
特に、初心者には2分割売買を繰り返し練習することで、半年~1年程度で利益が上げられるようになるとのことでした。
林輝太郎氏が推薦されていた練習方法は以下のようなものです。
- 銘柄をひとつに限定する
- 場帳をつける
- チャートを手書きで書く
- 逆張りで2分割売買をする
といった内容でした。
それぞれの内容を詳しく説明します。
銘柄をひとつに限定する
Contents
通常、株式投資の話になると、
「いい銘柄を教えてください」
といった話になることが多いと思います。
証券会社や投資顧問会社も、今週の注目銘柄というレポートを出していますし、有料レポートを発行している会社もあります。
ところが、うねり取りでは、これとは逆に、売買する銘柄をひとつに限定するのです。
それも、これから急騰しそうな株や成長株ではなく、業績が良くも悪くもない、あまり人気のない株が望ましいとされていました。林氏は、枯れた株というような表現をされていました。
例えば、日本を代表するSONY。
アメリカでも、未だに就職ランキングで上位に位置する世界的にも人気のある電機メーカーです。そして、毎日のようにニュースに取り上げられます。
ただ、業績の変動も非常に大きく、2018年度は7000億円もの黒字を出していますが、2014年度は赤字でした。
通常、多くの人は、SONYのように人気がある株を買いたがりますが、うねり取りでは、こういった人気のある株を推薦しません。
ちょっとした業績の悪化でも大きく株価が下がるからです。
実際、2018年4月の決算発表でも、過去最高の経常利益を出し、かつ、2019年度もその水準をキープできるという見通しだったにも関わらず、アナリストの期待値よりも低かったということで、1日で約4%も下げてしまいました。
もちろん、どんな株でも1日で5%程度下げることはあるのですが、チャートを見ると、窓を開ける、つまり、うねりの形が美しくないということで、売買対象から外されます。
NECもやはり日本を代表する電機メーカーですが、SONYに比べると人気、つまりニュースに取り上げられる頻度という点では、かなり見劣りします。
以下にSONYのチャートとNECのチャートを載せますが、NECのほうが、うねりのある動きとなっています。
「SONY」
「NEC」
こういった、うねりのある銘柄を繰り返し売買する手法がうねり取りです。
そして、売買の対象とする銘柄の数も一般的な投資家であれば、どの銘柄が急騰しそうかということで、複数の銘柄を対象にします。
ところが、うねり取りでは、急騰しそうかどうかはさておき、とにかく銘柄をひとつだけ選んで、その銘柄だけを繰り返し売買するのです。
ある本では、大平洋金属(5541)が、非常にきれいなうねりがあるとして推薦されていました。
「大平洋金属」
会社四季報で大平洋金属の業績を見ると、5年連続の赤字です。
成長株投資をしている人から見ると、とても買えないような株なのですが、自己資本比率は87.6%と非常に高く、すぐに倒産する心配はなさそうです。
まさに、枯れた株なのですが、こういった会社の株が安くなった時に買い、高くなった時に売るという手法がうねり取りなのです。
また、高くなった時は、空売りも仕掛けますので、貸借銘柄であることが条件です。
貸借銘柄(たいしゃくめいがら)とは、制度信用取引の対象銘柄のうち、信用取引の買建だけでなく、売建(空売り)もできる銘柄のことです。
なお、チャートは証券会社に口座を作れば、上記のようなチャートが、いつでも見れるようになります。
上記のチャートはGMOクリック証券の「スーパーはっちゅうくん」というソフトを利用しています。
場帳をつける
「場帳つける」とは、その日の終値と出来高だけを帳面に記載していく方法です。
昔は、パソコンやインターネットもなかったので、毎朝、新聞を見て、終値と出来高を確認し、それを帳面に記入していくという方法でした。
林輝太郎氏によれば、場帳をつけて、その数字を眺めることで、株価の変動が次第に分かるようになるとのことでした。
チャートを書く
これも、現在なら、インターネットで各社のチャートが一瞬で確認できます。
また、証券会社に口座を開けば、チャートと一緒に様々なテクニカル指標も表示できます。
ただ、林氏は、とにかく手書きでチャートを書くこと。
手書きでチャートを書くことで、株価変動が分かってくることを強調されていました。
それで、私も最大サイズの方眼紙(1m×70cm)を買って、それに、チャートを手書きしていました。
チャートの種類は、ローソク足でも、単に、終値だけを書く折れ線グラフでも、どちらでもOKです。ただ、とにかく手書きでチャートを書き、それを毎日眺めることで、株価の変動が分かってくるということでした。
逆張りで2分割売買をする。
そして、場帳とチャートを書いて、毎日、
- 下げ止まったか?
- 上げ止まったか?
だけを考える。
下げ止まったと感じれば、資金の半分で買う
さらに、下げれば、もう半分買う
上げ止まったと感じれば、資金の半分で空売りをする
さらに、上げれば、もう半分空売りをする
というものでした。
2回に分けて売買をするから、2分割売買です。
私も、この2分割売買の練習を半年ほど続けました。
結果、売買に上達したかということですが、残念ながら、これだけでは、全く上達しませんでした。
2分割売買練習方法の問題点
私の才能の問題もあったのかもしれません。
しかし、私にとっては以下のような問題があり、全く上達する気配が感じられませんでした。
仕掛けの時期が不明
「しばらく場帳とチャートを書いていれば、下げ止まりが分かるので、その時に買えば良い」、とのことだったのですが、当時は、全くこの感覚が分かりませんでした。
分からないながらも、「下げ止まったかな」と思って、買うと、すぐに株が下がります。
逆張りの2分割で買うというルールなので、5%程度下がったら、さらに、株を買い増しします。
ところが、そこから、さらに、5%程度下がります。
10%下がれば、損切というルールもありましたので、そこで損切決済となります。
何回かやれば、上達するとのことだったのですが、3連敗もすれば、資金も30%近く減り、嫌になってしまい、2分割売買を中止してしまいました。
安定して利益が出せるようになったのは、日本の昔からのうねり取りという手法にアメリカ流のトレード手法をミックスさせてからです。
トレンドフォロー型売買とは?
現在、アメリカで主流となっている手法はトレンドフォロー型売買と言われています。
トレンドが発生したと思われる段階で仕掛け、そのトレンドが続いている限り、建玉を維持するというものです。
仕掛け(セットアップ)のルール
有名なルールとしては、
- 過去20日間の高値を超えてきたら、買いから仕掛ける
- 成長株で高値を更新したら、買いから仕掛ける
- 20日間移動平均線を超えてきたら、買いから仕掛ける
といったルールです。
これなら、2分割売買手法と違って、仕掛けの基準が明確です。
もちろん、常に、利益が出るわけではないのですが、損切基準を厳しく設定しておけば、連敗しても市場から撤退することはありません。
なお、アメリカの成功しているトレーダーの損切基準は、投資資金全体のたったの1%といった、非常に厳しいルールを設定している人が多いようです。
これだけ損切基準を厳しくすると、買ったその日に損切に引っかかってしまう場合も多いのですが、大損する心配はありません。
順張りか、逆張りか?
日本の昔の相場師は、圧倒的に逆張りが多かったそうです。
つまり、買いから入るならば、相場が下がった時に株を買い増しするのです。
トレンドの逆をやる、つまりトレンドの逆に相場を張るということで、逆張りと言います。
例えば、
5月14日 1,000円 100株購入
5月15日 950円 100株購入
平均購入価格 975円 200株
5月30日 1,100円 200株売却
利益 (1,100円-975円)×200株=25,000円
こうすることで、1,000円で200株買うよりも平均値が下がり、次に、上昇した時に利益が増えるという考え方です。
確かに、うまく行けば、1,000円で200株購入するよりも、利益は増えるのですが、950円で下げ止まらずに、どんどん下がり続ける可能性もあります。
また、トレンドフォロー型売買では、トレンドが発生した(もしくは、発生しそう)な時に株を購入しますので、基本的には、上昇トレンドで株を買っていきます。日本風に言えば、順張りです。
ただ、これまで説明してきた2分割売買では、逆張りを前提としていますので、まだ、下げトレンドの途中で株を購入するケースが多くなるのです。
もちろん、投資に上達をして、下げ止まりの感覚が鋭くなれば、逆張りで大きく利益を上げられるようになるのでしょうが、初心者のうちは、損がドンドン大きくなる可能性があります。
一方、アメリカでは、順張りが推薦されているようです。
つまり、順張りのほうが、以下のように、リスクが少なくなるということです。
5月14日 1,000円 100株購入
5月15日 1,050円
この時点で50円の含み益が発生しています。
含み益が発生している状態で、追加で100株購入します。
5月15日 1,050円 100株購入
平均購入価格 1,025円 200株
5月30日 1,100円 200株売却
利益 (1,100円-1,025円)×200株=15,000円
確かに、逆張りで成功した場合に比べて、利益は減ります。
しかし、株が下がった場合は、追加購入しませんので、それだけリスクは減り、初心者にも安心して売買できます。
そして、売買を繰り返していけば、この方法でも変動感覚を養っていくことができるようになります。
少しずつ利益を積み重ねていけば、売買した時の感情もコントロールできるようになります。
うねり取りは利益率が低い?
急騰銘柄を探し出して、売買する一般的な売買手法に比べると、うねり取りは利益率が低いと思われるかもしれませんが、決して、そんなことはありません。
まず、どの程度の利益率を目標にするかということですが、世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェットでさえ、生涯利回りは20%だったということです。
また、フィディリティ・マゼラン・ファンドを13年間運用した伝説のファンドマネージャーと言われるピーター・リンチ氏の成績も23%だったそうです。
つまり、一時的に50%や100%もの利益率を出す人もいるのでしょうが、毎年、安定的に利益を稼ごうとするのであれば、10%~30%レベルが現実的な数字でしょう。
ちなみに、上で紹介した太平金属の場合、2018年1月から5月までのたった4か月間でも、株価は3,700円から2,900円へと低下し、さらに、再度、3,800円まで上昇しています。
もちろん、天井で売って、底で買い、また、天井で売り抜けるといったことは不可能なのですが、このうねりの半分でも捉えることができれば、非常に大きな利益を取ることができます。
例えば、
1回目:3,450円空売り ⇒ 3,100円買戻し 利幅350円
2回目:3,100円新規買い ⇒ 3,600円売却 利幅500円
合計 850円 利益率 24.6%
なんと4か月程度で利益率が20%を超えるのです。
もちろん、いつも、こんなにうまく行くのではありませんが、うねり取りでも十分な利益が取れる可能性はあることはお分かりいただけるでしょう。
初心者にでも安心してできる売買練習方法とは?
それでは、日本古来のうねり取りとアメリカ流のトレンドフォロー型売買のいい点を取り入れた売買練習法とは、どのようなものでしょうか?
銘柄を限定する
まずは、チャートを見て、うねりのある銘柄を見つけ、練習期間中は、ひとつの銘柄だけを売買しましょう。
なお、株ではありませんが、日経225ミニも、きれいなうねりを見せます。
先物取引といえば、危険だと思われる方も多いでしょう。
ただ、これは大きすぎる売買を行うから危険なだけであって、しっかりとした資金管理と損切さえ行えば、現物株を売買するのと、何ら変わりありません。
銘柄選びが面倒だというのならば、日経225ミニから始めるのもオススメです。
仕掛けのルールを決める
初心者のうちは、「下げ止まった時に買え」と言われても、いつ買えばいいのか分かりません。上述したようなルールを設定し、チャンスが来た時に初めて仕掛けることをオススメします。
株式投資をする人なら、誰しも必ず勝てる魔法のシステムを探したくなります。アメリカでは、これを聖杯伝説にたとえて、聖杯と呼んでいます。
ただ、そんなシステムが存在するわけもありません(あったとしても個人投資家が手に入れられるわけはない)ので、ごくシンプルなルールで十分です。
例えば、10日や25日移動平均線を上回った時に、買い出動するなど。
どういった仕掛けのルールがいいかは、各人の性格も影響してきますので、自分の性格と銘柄にあった方法を選択しましょう。
損切のルールを決める
損切については、購入価格の1%~3%という低い数字を設定されることを強くオススメします。
損切基準を厳しく設定すればするほど、勝率は下がりますが、破産する確率は低くくなります。
また、何回も同じ銘柄を売買することで、慣れてきますので、どんどんストレスが減っていきます。
手仕舞いのルール
投資では「損小利大」が大切と言われます。
これまで、損ばかりしてきた人は、買った株が10%も上がれば利食いしたくなりますが、トレンドフォロー売買の場合は、いかに、長くトレンドについていくかが成功の鍵になります。
仕掛けの時と反対のサインが出るまで粘り強く、手仕舞いのタイミングを遅らせましょう。
例えば、「25日移動平均線を上回ったら買い」という仕掛けのルールならば、「25日移動平均線を下回ったら売り」を手仕舞いのサインにするのです。
少ない資金で売買を繰り返す
上記のルールが設定できたら、まずは、少ない資金で売買を繰り返しましょう。
安定して利益が出るようになれば、資金を増やしていきます。
まずは、証券会社に口座を開き、チャートを見て、対象銘柄を探しましょう。
続けていれば、次第に、上達します。