損小利大とは?

相場の格言に「損小利大」というものがあります。

これは、損をする時は小さく、利益を出す時は大きくなるような投資を実践すれば、次第に利益は積みあがっていくというものです。

筆者は、この格言自体は、昔から知っていましたが、実践できるようになってきたのは、ここ2年くらいです。

伝説の投資家グループ タートルズの投資手法

アメリカにタートルズという伝説の投資集団がありました。

1983年、当時、既に、伝説的だったアメリカ人の投資家リチャード・デニス「シンガポールの亀(タートル)牧場みたいに、トレーダーを育ててみよう」と同僚のウィリアム・エックハートに言い出しました。

これに対して、ウィリアム・エックハートは「トレーダーになるには天賦の才能が必要だ」と言い、口論となりました。

その結果、1983年に、「 教えられた投資手法は実験終了後5年間は絶対に口外禁止」という条件で、 ウォール・ストリート・ジャーナルに広告を出し、トレーダーを募集、育成しました。

そのトレーダー養成塾が「タートルズ」です。

タートルたちは、わずか2週間の研修プログラムを終えると、それぞれ100万ドルの口座を任され、市場に参戦しました。そして、多くのメンバーが次々と巨額の利益をあげ、トレーダーは正しい訓練により育てられることが証明されたと言われています。

そして、このタートルズが使った手法がトレンドフォロー型売買手法と言われています。

トレンドフォロー型売買とは?

トレンドフォロー型売買とは上昇トレンドが発生したと思ったら買いから、下降トレンドが発生したと思ったら売りから市場に参入する投資スタイルです。

それでは、トレンドの発生をどうして見極めるかということですが、代表的な手法としては、以下の2つがあります。

ゴールデンクロスが発生したら買い、デッドクロスが発生したら売り。

  • 25日移動平均線が75日移動平均線を下から上へ抜いたら買い(ゴールデンクロス)。
  • その逆に、25日移動平均線が75日移動平均線を上から下へ抜いたら売り(デッドクロス)。

過去20日間の高値を上抜いたら買い、過去20日間の安値を下抜いたら売り。

元々、リチャード・ドンチャン氏が提唱した手法でドンチャン・ブレイクアウト手法とも呼ばれますが、タートルズもこの手法を使っていたと言われています。

トレンドフォロー型売買のメリットとデメリット

トレンドフォロー型売買のメリット

ペイオフレシオが高い

一回当たりの平均利益額÷一回当たりの平均損失額をペイオフレシオと呼びます。

例えば、一回当たりの平均利益額は100万円。一方、一回当たりの平均損失額は25万円ならば、 ペイオフレシオは100万円÷25万円=4となります。

この場合、たとえ勝率が30%しかなくとも期待値は以下の通りプラスとなります。

 期待値
=勝率×一回当たりの平均利益額-(1-勝率)×一回当たりの平均損失額
30%×100万円/回-70%×25万円/回=12.5万円/回

つまり、一回売買するごとに12.5万円の利益が期待できます。

このように勝率は低くても一回勝てば、大きな利益が見込めます。

特に、成長株の場合は、ゴールデンクロスが発生した時点で購入すれば、50%程度の利益になることが頻繁にあります。

トレンドフォロー型売買のデメリット

勝率が低い

しかし、上記で説明したように勝率が低いのが難点です。一般的にトレンドフォロー型売買での勝率は30%~40%程度と言われています。

タートルズの勝率も40%を切っていたと言われています。

勝率が1/3ということは、負ける確率が2/3もあります。

この場合、5連敗する確率も13%とかなり高い水準であります。

トレンドフォロー型売買の場合、売買回数は少なくなりますが、仮に、毎月1回売買したとすれば、7カ月に1回程度は5連敗することもあるという計算になります。

これだけ負ける確率が大きいなかで、最終的に利益を確保しようとすれば、「損小利大」を徹底する売買ルールを構築しなければなりません。

そして、その損小利大に大いに役立つ投資手法がトレーリングストップです。

トレーリングストップ(Trailing Stop)とは?

トレーリングストップ注文は、相場の値動きによって、ストップロス注文を動かしていく方法です。

英語でTrailは引きずるという意味です。

トラックのトレーラーやトレーラーハウスは、まさに、荷台や家を引きずっています。

トレーリングストップは価格の上昇に合わせて、ストップロス注文も引きずり上げていくという方法です。

例えば、以下のチャートは太陽誘電(銘柄コード:6976)の日足チャートです。

太陽誘電日足
GMOクリック証券

2019年9月初旬、10日移動平均線を終値が超えてきたところで購入したとします。

2019年9月3日始値1997円で購入。

次にトレーリングストップを採用し、終値と直近の高値を比較し、終値<高値×95%になった翌日の始値で売却するというルールを作ったとします。

売買ルール
エントリー:終値が10日移動平均価格を上回った翌日の始値で買い。
イグジット:終値が直近高値から5%以上下落した翌日の始値で手仕舞い。

この場合、相場は順調に上昇を続け、10月29日に3065円の高値をつけます。

その後、10月31日に終値で2901円となり、高値から5%下がったため、11月1日の始値2895円で売却。

約2カ月で2895円÷1901円≒152%の上昇です。

相場はその後1月15日に3,685円まで上昇を続けますが、トレーリングストップの幅を5%に設定していた場合は、最後の上昇までは取れませんでした。

もし、ストップの幅を高値から10%に設定し、終値が直近高値から10%下落すれば手仕舞いというルールにしていた場合は、トレーリングストップにかかる日付がずっと延びます。

この場合、ずっと相場の上昇を追跡し、2020年1月30日の終値が3290円になった時点で終値<高値×90%となり、翌日の始値3325円で売却することとなります。

この場合、約5カ月で3325円÷1901円≒175%の上昇です。

損切ポイントをどのように設定するかで利益は大きく変わってきます。

ただ、損切の率を大きくすれば、当然、リスクも大きくなりますので、全体の資金管理方法や投資スタイルによって損切ポイントを決定していきます。

トレーリングストップのメリット

トレーリングストップの最大のメリットは、損小利大の格言が実現できるということです。

例えば、上述の太陽誘電で、
買いのみで、終値ベースで10日移動平均線を超えたら買い。また、同様に終値ベースで高値から5%逆行すれば翌日の始値で売りというルールで太陽誘電を2019年9月から2020年6月まで売買したところ、以下の通りの結果となりました。

買い 売り 利益
1901 2895 994
2900 2878 -22
2957 2805 -152
2929 3450 521
3525 3325 -200
3500 3400 -100
2948 2899 -49
2782 2770 -12
2945 3110 165
2950 3350 400
勝ち数 4
負け数 6
勝ち金額計 2080
負け金額計 -535
勝ち金額回 520
負け金額回 -89
勝率 40.00%
PF 5.83
期待値 154.5

勝率としては、どうしても低くなってしまいますが、勝ち金額合計は、2,000円と当初購入価格から考えると、資産倍増の結果となりました。

トレーリングストップのデメリット

高値更新に合わせて、ストップの位置を上げていくため、どうしても勝率は低くなってしまいます。

ただ、これは、損小利大を実践するために欠かせない要因でもあります。

ぜひ、自分の注目銘柄で試してください。

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