その会社の業績が、「世界景気の先行指標」
となると言われている会社があります。

それが、アメリカのFederal Express
という会社です。

ご存知ない方も多いかもしれませんが、
世界最大の航空会社です。

航空会社というと、JALやANAを
思い浮かべられる人が多いと思いますが、
Federal Express(通称:FedEx)は、
運送専門の航空会社で、人は乗せません。

世界220か国でサービスを展開しており、
飛行機も自社で数百機持っています。
原則、地上配送も自社トラックで行っており、
一気通貫のサービスを提供しています。

JALやANAも旅客だけでなく、
貨物も運んでいます。
ただ、地上配送は他の会社に委託している
ため、FedExに比べると、
かなり配達スピードが遅いのです。

FedExがどのくらい早いかというと、
アメリカであれば、今日、荷物を発送すれば、
明日には配達されます。

日本国内の郵便よりも
はるかに早いのです。

FedExの最も早い便となると、
なんと

今日発送して、
昨日、配達されるという、

まるでSFのような
タイムトラベル便さえあるのです。

冗談だと思われるかもしれませんが、
本当に過去に飛ぶ飛行機があるのです。

種明かしをすると、
アメリカとは、かなり時差があるため、
その時差を使うと、
今日発送して、昨日配達という、
あり得ないことが、あり得るのです。

もう少し具体的に言えば、

関西空港を火曜日の23時に出発して、
アメリカのテキサスに向かう
飛行機があります。

飛行時間は約10時間なのですが、
時差がマイナス15時間ありますので、
火曜日の深夜に飛んだ飛行機が
現地時間の月曜日の夕方に着いてしまう
のです。

もちろん、スピードが早い分、
料金は他の運送会社(ANAや国際郵便)
に比べて、若干高くなります。

じゃあ、配送費用が少し高くなっても
OKな貨物と言えば、
どんな貨物を運んでいるのでしょうか?

電機業界でいわゆる「軽薄短小」
と言われるような

軽くて、小さくて、高い

商品を運んでいるのです。

一番代表的な商品と言えば、
iPhoneです。

中国で生産されているiPhoneは
FedExで全米各地に配達されます。

実は、筆者は、
長年この会社で働いていました。

さて、そのFedExですが、
なぜ「世界景気の先行指標」
と言われるかといえば、
iPhoneなどの
ハイテク製品の売れ行きが
悪くなれば、
すぐに、他のもっと安い運送会社に
切り替えられるからです。

FedExの最大のメリットはスピードです。
日本からでも1日で配達されるのは、
他の会社では、なかなか真似できません。

しかし、iPhoneの売れ行きが悪くなって、
在庫が余っているならば、
そんなに急いで
配達されなくてもいいわけです。

そういうわけで、
ハイテク製品の売れ行きが下がってくると、
途端にFedExの業績も悪化するのです。

そして、2022年9月には、
FedExの業績が急激に悪化
と報じられました。

もちろん、今が底で、
ここから回復していく可能性もあります。
しかし、あえて、世界景気の先行指標が
悪くなっている段階で、
ガンガン買いポジションを
増やさなくてもいいでしょう。

一般的に、
相場が下落するときは急降下しますが、
上昇トレンドの場合は、
ゆっくりと長い時間をかけて
上がっていきます。

買いポジションを増やしていくのは、
FedExのような景気先行指標が
上向くのを待ってからでも
遅くないでしょう。